2006 Fiscal Year Annual Research Report
野生メダカ個体群の絶滅確率による有害化学物質の生態リスク評価
Project/Area Number |
17510027
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
田中 嘉成 独立行政法人国立環境研究所, 環境リスク研究センター, 室長 (60338647)
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Keywords | 環境調和型農林水産 / 環境変動 / 生態系修復・整備 / 環境 / 生態学 / 生態リスク評価 / 絶滅確率 / 存続可能性分析 |
Research Abstract |
生態リスクをメダカ個体群の絶滅リスクで推定するうえでの基礎となる、生態学モデルの研究を行った。モデルは、ため池、用排水路などの止水域の生態系を念頭に置き、藻類、ミジンコ類、魚類(メダカ)の3種系の栄養用段階を構成要素とした。魚類は、卵期、仔魚期、稚魚期、成魚期の4つの生活史段階に区別し、化学物質の影響も、各生活史段階における死亡率と成魚期における繁殖阻害を区別した。藻類、ミジンコ類に対する毒性影響は、個体群増殖率の低下としてモデルに組み込んだ。藻類とミジンコ類、ミジンコ類と魚類の間には、食うものと食われるものの関係に基づく種間相互作用を組み込み、3種の個体密度を経時間的に計算する連立差分方程式を作成した。食うものと食われるもの関係の定式化には、Holling II型の捕食方程式を適用した。餌の欠乏による個体群の減衰が組み込まれているために、藻類やミジンコ類に対する毒性効果は、種間相互作用を介してボトムアップ式に、魚類の個体数変動に影響を与える。 茨城県桜川における農薬の測定濃度データを用いて、3種の個体数変動シミュレーションを各物質に対して1000回繰り返し、魚類(メダカ)の絶滅リスクを推定した。個体数動態の確率性は、生存率などの生活史成分の確率変動として発生させた。解析した6物質(プレチラクロール、ブタクロール、ピリダフェンチオン、ダイアジノン、LAS、ノニルフェノール)の中でプレチラクロールとブタクロールなどの除草剤の影響が特に強く現れた。これは、化学物質暴露による藻類個体群への影響が、種間相互作用を介して上位の魚類個体群にも作用することを示唆している。種間への波及効果の大きさをより正確に評価するためには、捕食方程式に必要なパラメータ値の正確な設定が必要であり、今後の野外調査データと数理モデルの挙動との比較検討が必要である。
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Research Products
(1 results)