2006 Fiscal Year Annual Research Report
リスク/環境コミュニケーションによる社会的記憶の形成過程に関する研究
Project/Area Number |
17510030
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Research Institution | Musashi Institute of Technology |
Principal Investigator |
大塚 善樹 武蔵工業大学, 環境情報学部, 助教授 (10320011)
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Keywords | 環境コミュニケーション / 社会的記憶 / テキスト・マイニング |
Research Abstract |
(1)前年度に引き続き、近年の歴史学や社会学における記憶に関する研究成果を、環境への適応サイクルモデルに取り入れることで、社会的記憶の概念を再構築した。特に、リクールとノラの歴史哲学における想起と記憶の区別を適応サイクルモデルの反乱と回想の区別に接合することを試みた。 (2)環境コミュニケーションとして、地球温暖化に関する一般雑誌記事に集中してスキャンニングとテキスト化を行い、データベースを構築した。大宅壮一文庫所収の一般誌,総合誌,経済誌を中心に、1988年から2005年まで、合計413件の関連記事の全テキストをデータベースに収載した。これらの合計27,105文のテキストを形態素解析にかけた後、さらに独自の辞書を作成して分節化と類義語による統合を行い、のべ275,609語からなる「地球温暖化」関連記事データベースとした。また、記事の出現パターンから、1988〜96年(第I期)、1997〜2000年(第II期)、2001〜05年(第III期)の三期に区分し、雑誌カテゴリーとともに分析属性とした。 (3)前年度で整備したマイニング・ソフトウェアのText Mining Studio(数理システム)を用いて、上記データベースの内容分析を行った。まず、特徴語分析と対応分析によって、時期区分と雑誌カテゴリーと記事内容の関連性を調べた。次に、各属性内での共起語分析によって、「地球温暖化」が語られる文脈を抽出し、そのパターンがどのように変化してきたかを検討した。結果として、第I期に顕れていた戦争や冷戦などそれ以前の国際政治への言及が終息するとともに、国家や企業を主要なアクターとする言説が主流となったことがわかった。 (4)以上の考察から、戦争や冷戦の想起と「地球温暖化」言説との関連について共起語ネットワーク分析を行い、その変化について詳しく考察することで、研究成果をまとめた。
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