2005 Fiscal Year Annual Research Report
光質環境と芳香族炭化水素が海産植物プランクトンへ及ぼす複合影響
Project/Area Number |
17510034
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
奥村 裕 独立行政法人水産総合研究センター, 東北区水産研究所・海区水産業研究部, 主任研究官 (80371805)
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Keywords | 芳香族炭化水素 / 植物プランクトン / 光毒性 |
Research Abstract |
太陽光と化学物質による複合暴露は、生物に対する毒性が化学物質だけの暴露に比べ増大すると考えられている(光毒性)。そこで、光毒性を生物機能の側面から調べるため、異なる光条件下(白色光、白色光強光、赤色光、緑色光照射)で、含有する色素の異なる4種類の海産植物プランクトン(珪藻Phaeodactylum tricornutum、プラシノ藻Pycnococcus provasolii、クリプト藻Rhodomopas salina、藍藻Phormidium sp.)に対し、芳香族炭化水素のナフタレンを暴露(0、0.05、0.5、5ppm)し、光条件の違いがナフタレン暴露下における植物プランクトンの生長に影響を及ぼすか調べた。白色光強光(2000μmol/m^2/s)照射下では、白色光照射(200μmol/s/m^2/s)に比べ、実験に用いたすべての植物プランクトンが強光による光障害を引き起こした。それに伴い、ナフタレン暴露区ではナフタレンによる毒性と光障害との複合作用のため植物プランクトンの生長が強く阻害された。また、赤色光(200μmol/m^2/s、極大波長625nm)照射下では、藍藻のPhormidium sp.がナフタレンによる毒性と光障害との複合作用のため生長が強く阻害された。藍藻は、通常620nm前後に極大吸収波長を持つ色素タンパクのフィコシアニン(今回のHPLC分析では600nm)を持ちフィコシアニンが赤色光を吸収し光障害を引き起こしたためと考えられた。光毒性の作用機構は、太陽光下(主に紫外線)で構造変化した化学物質が、水溶性を増し、生物体内に取り込まれやすくなることにより毒性が増大すると考えられているが、光合成生物の植物プランクトンにおいては、強光(可視光)による光障害と化学物質の毒性による複合影響によっても毒性が増大することが明らかとなった。
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