2007 Fiscal Year Annual Research Report
光質環境と芳香族炭化水素が海産植物プランクトンへ及ぼす複合影響
Project/Area Number |
17510034
|
Research Institution | Fisheries Research Agency |
Principal Investigator |
奥村 裕 Fisheries Research Agency, 東北区水産研究所・海区水産業研究部, 主任研究員 (80371805)
|
Keywords | 海洋保全 / 環境政策 / 植物 / 微生物 |
Research Abstract |
紫外照射下で、植物プランクトンに対してナフタレン暴露実験を行い、紫外線とナフタレンによる複合毒性の有無を調べるとともに、植物プランクトンの紫外線吸収物質であるマイコスポリン様アミノ酸(MAAs)の及ぼす影響を調べた。植物プランクトンの光合成による酸素発生量は、可視光(200μmol/s/m^2)>可視光+紫外線(ピーク波長360nm;20μmol/s/m^2)>可視光+ナフタレン(15ppm)>可視光+紫外線+ナフタレンの順で減少し、紫外線照射+ナフタレ暴露区は、他の実験区に比べ光合成が阻害されており、複合影響により毒性が増大することが明らかとなった。一方、実験で使用した珪藻(phaeodactylum tricornutum)、プラシノ藻(Pycnococcus provasolii)、ハプト藻(Isochrysis galbana)、紅藻(Porphyridium purpureum)は波長約338nmの吸収極大を持つマイコスポリン様アミノ酸(MAAs)の存在が確認できたが、紫外線照射の有無や明暗(概日)周期による変動は明確でなく、紫外線照射+ナフタレン暴露によりMAAsの変動も観察されなかった。そのため、光毒性の作用機構は、太陽光下(主に紫外線)で構造変化した化学物質が、水溶性を増し、生物体内に取り込まれやすくなることにより毒性が増大すると考えられているが、光合成生物の植物プランクトンにおいては、紫外線による光障害と化学物質の毒性による複合影響によっても毒性が増大することが明らかとなった。一方、実験で使用した植物プランクトンに対して、紫外線照射+ナフタレンの暴露はMAAsの合成に影響を及ぼさないと考えられた。
|