2007 Fiscal Year Annual Research Report
線質を異にする放射線被ばくの細胞遺伝学的指標(フィンガープリント)探索の研究
Project/Area Number |
17510056
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Research Institution | National Institute of Radiological Sciences |
Principal Investigator |
神田 玲子 National Institute of Radiological Sciences, 放射線防護研究センター, チームリーダー (40250120)
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Keywords | 放射線 / 染色体 |
Research Abstract |
中国・陽江、インド・ケララ、ブラジル・ガラパリ、イラン・ラムサールは高自然放射線地域として知られている。前3者ではモナザイト砂が、イランのラムサールではラジウムを含む泉水が、主な放射線源である。上記の4地域の中では、ラムザールの屋内ラドン濃度が高いことが知られており、個人被ばく線量におけるアルファ線の寄与率は最も高いと予想される。そこでラムサール地方住民の染色体分析データから、環状断片と二動原体の比(RaD値)及び過剰断片と二動原体の比(EfD値)を計算し、(1)放射線治療・事故による被ばくや(2)ヒト末梢血のin vitro照射実験での数値と比較した。 ラムサールでは、極めて屋内線量率が高い家屋が報告されているが、個人被ばく線量の平均値はさほど高くなく、二動原体+環状染色体の頻度も陽江住民に比べ若干低い。ラムサール住民のRaD平均値は(1)(2)で示された高LETと低LETのRaD値の中間程度であり、JCO事故被ばく者(中性子とγ線の混合被ばく)の数値に最も近かった。一方EfD値は(1)(2)での結果に比べてはるかに大きかった。動原体を有さない断片や環状断片は二動原体よりも消失しやすく、慢性被ばくの場合は断片を伴わない二動原体が観察されることも多い。しかし今回の結果は二動原体や環状染色体の生成とは別に単独で断片が生成されている可能性が高く、ラジウムの金属毒性の関与が考えられる。 線質によりフィンガープリント値に差が生じる機構の解明には、放射線損傷が未修復の染色体異常を解析する系が必要である。そこでヒト末梢血から分離したリンパ球(ほとんどの細胞がGO期)を、分裂刺激剤、ATP、サイクリンB存在下で短時間培養し、細胞固定直前にホスファターゼ阻害剤であるカリキュリンAで処理した結果、未成熟染色体凝縮の誘発に成功した。今後、誘発率の上昇と染色体形態の向上のための改良を試みる。
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Research Products
(1 results)