2005 Fiscal Year Annual Research Report
遺伝子重複からの復帰変異を指標とした放射線誘発遺伝的不安定性機構の解析
Project/Area Number |
17510060
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Research Institution | Radiation Effects Research Foundation |
Principal Investigator |
野田 朝男 (財)放射線影響研究所, 遺伝学部, 室長(研究員) (40294227)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
児玉 喜明 , 財団法人・放射線影響研究所・遺伝学部, 副部長(研究員) (60359453)
中村 典 , 財団法人・放射線影響研究所・遺伝学部, 部長(研究員) (00010116)
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Keywords | 遺伝的不安定性 / 放射線影響 / HPRT |
Research Abstract |
放射線被曝により遺伝的不安定性を示す細胞クローンを効率よく獲得する実験系を作成した。この系においては、細胞分裂あたりの突然変異誘発頻度を不安定性評価の指標として用いることとした。突然変異を効率よく測定するため、本研究ではGene targetingによりHPRT遺伝子座の部分重複を持つヒト細胞を作成した。この細胞は重複配列間での突然変異を極めて容易に検出できる特徴を持つ極めてユニークなものとなった。 この細胞が被曝後に起こすHPRT遺伝子座の復帰突然変異率(重複配列の不安定性の指標)と、復帰変異後のHPRT遺伝子の前進型突然変異誘発率(特異的塩基配列における不安定性の指標)の関係について、多数の細胞クローンを用いて調べた。その結果、放射線被曝による当該重複配列の不安定性と前進型変異の起こりやすさとは直接的な相関は見られないという知見が得られた。このことは、ゲノム中の重複配列の変異を指標として放射線の遺伝影響評価しようとする考え方に再考を促すという意義があると結論づけている。 また、放射線によるゲノムの不安定化発現機構の解析にも着手し、本年度は多数の不安定細胞クローンについて遅延性の染色体異常の出現、DNA二重鎖切断、活性酸素産生を検出することができた。従って、放射線被曝後に傷害から回復し正常に分裂を再開した細胞群の中に、遅れて突然変異が起こるクローンが一定頻度で存在し、これらは細胞内で何らかの理由により活性酸素が増産する状態が持続している(炎症状態)可能性があることを明らかとした。本研究は、これまで断片的に提唱されてきた放射線誘発遺伝的不安定性機構を再現良く検出できる実験系として有用であり、今後放射線のみならず環境変異源などの遺伝リスク評価にも応用できると期待している。 本年度はこれまでの結果をヨーロッパ放射線学会(ERR2005,イギリス)にて発表した。また国内学会でも成果発表につとめた。論文も投稿準備中である。
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