Research Abstract |
炭素-炭素単結合と二重結合の繰り返し構造からなるポリインの両末端に電子供与基,電子吸引基を導入したプッシュ-プル型化合物の中で,特に電子供与基にアミノ基,電子吸引基にカルボニル基を有する場合,ポリメチンメロシアンと呼ばれる.共鳴理論によれば,メロシアニンは中性構造と電荷分離構造との寄与から成り,両者のクーロンポテンシャルの差が物理的性質を決める.本研究は4-アミノ-6-オキソピリミジンが上述のメロシアニンの構造を有し,加えて,水素結合供与,授与部位を含む事から,標題の分子演算能を指向し,会合体における光学物性および分子配列についての結晶学的研究を行った. 先ず,母体骨格である4-アミノ-6-オキソピリミジンの光学物性では,エタノール中280nm付近のπ-π^*遷移が,会合体では360nmに赤色シフトし,種々の溶媒での吸収スペクトル,半経験的計算化学を用いた考察から,観測した吸収帯は,J型の励起子帯である事が明らかになった.この分子は,単分子では無蛍光性であるが,励起子帯に光照射すると400nmで発光し,量子収率は0.1で発光寿命は2ns,及び5nsであった.その集合構造は,自己相補的な水素結合で形成された無限遠一次元鎖構造とそれらがπ-πスッタクした構造で,何れかあるいはその両者が励起子生成に関与していると示唆され,会合体でのJ型励起子生成を明らかにした. 次に,幾つかのアルキルアミノ誘導体の結晶構造を明らかにした.アルキル基がメチル,イソプロピル,及びイソブチル基のα相では,自己相補的な無限遠一次元鎖構造が形成されるが,集合構造に於いてカルボニル酸素の内側(syn)と外側(anti)が水素結合に関与する場合は,中性構造と電荷分離構造が同程度寄与した構造を呈し,synのみでの水素結合は中性構造に近い構造をしている事が分かった.また,イソブチル基を有する化合物は結晶多形であり,β相は環状六量体のバンドル構造を形成する事を明らかにした.
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