Research Abstract |
別府市明礬地区は,酸性泉で有名な温泉地であるとともに,付近一帯が特有の地質条件を有した,いわゆる温泉地すべり発生地帯となっている.明礬地区の主な地すべり履歴としては,1966年9月と1996年9月の台風によるものが報告されており,対策工が施されたものの,2002年頃から依然として滑動が継続しており,計測を行っているところである.そこで,本研究では,現場計測および室内試験を行うことによって温泉地すべりの安定性について検討してみることにした. 明礬地すべり区域(Dブロック)において,地下水位の変動および地下水の水質を調べるために,各ボーリング孔(DBV-1〜6)の地下水位および地下水の水温,pH,電気伝導率について計測を行った.計測を行うにあたっては,触針式水位計にpH・電気伝導率測定器を組み合わせたものを用い,2005年5月25日(気温19.8℃),12月27日(8.7℃),2006年1月19日(9.8℃),4月7日(13.8℃)の4回にわたって地下水位,地下水の水温,pH,電気伝導率の測定を行った.DBV-1孔において測定された深度別の地下水温とpHの分布より,水温は深くなるにつれて高くなる傾向にあり,25m付近においては50℃の高温になっていることより,温泉水の影響を大きく受けていることがわかった.また,pHは,3〜4の強酸性となっており,深さ方向による差はとくに認められなかった.DBV-1〜6孔のpHと電気伝導率との関係より,DBV-2では電気伝導率が550μS/cmと大きくなっているが,それ以外の孔では250〜300μS/cmとなっており,ボーリング孔によって電気伝導率の値が大きく異なっていることがわかった.このことは,DBV-2の地下水とそれ以外の地下水の流入経路が異なっていることを示唆するものである.一方,集水井工事により得られた温泉余土を用いて圧密定圧一面せん断試験を行い,強度定数を求めたが,地すべりの発生を説明することが出来るような結果が得られなかった.今後は継続して実験を行う予定である.
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