Research Abstract |
別府市明礬地区は,酸性泉で有名な温泉地であるとともに,付近一帯が特有の地質条件を有した,いわゆる温泉地すべり発生地帯となっている。明礬地区の主な地すべり履歴としては,1966年9月と1996年9月の台風によるものが報告されており,対策工が施されたものの,2002年頃から依然として滑動が継続しており,計測を行っているところである。そこで,本研究では,現場計測および室内試験を行うことによって温泉地すべりの安定性について検討してみることにした。 明礬地すべり区域において,地下水位の変動および地下水の性状を調べるために,各ボーリング孔の地下水位および地下水の水温,pH,電気伝導率について計測を行った。なお,計測は,2005年5月25日から2006年12月22日にかけて合計14回実施した。 まず,pHの深度別分布の結果より,地下水のpHは,3前後の強酸性であることがわかった。温泉腐食環境区分によれば,コンクリートの腐食の程度は,pH≦4で"非常に大きい"となっており,今回の結果より,明礬地すべり地のpHはほとんどが4以下となっていることから,コンクリートの腐食の程度は非常に大きいということが明らかとなった。次に,電気伝導率の深度別分布の結果より,電気伝導率は概ね10〜30mS/mを推移しているが,一部のボーリング孔では,30〜100mS/mを推移しており,他のボーリング孔と異なった地下水が流入している可能性が高い。 以上の結果より,温泉地すべり地の地下水の性状は,高温,低pH,高電気伝導率という高腐食環境下にあるということが明らかとなったことから,対策工を行うにあたっては,耐熱・耐酸を考慮に入れた材質を選択することが必要である。 一方,今回の地下水調査の結果より,地下水の性状がすべり面のせん断特性にも少なからず影響を及ぼしているものと推察され,これらの性状が温泉地すべり斜面の安定性を検討する上で重要な要因のひとつになるものと思われる。
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