Research Abstract |
大分県別府市には泉質や雰囲気を異にした温泉が多数湧き出ており,源泉数(孔)2,847箇所,湧出量137,040キロリットル/日と源泉数,湧出量ともに日本一の温泉観光地である。このうち,明礬地区は酸性硫化水素泉,緑ばん泉で有名な温泉地であるが,付近一帯が特有の地質条件を有した,いわゆる温泉余土から構成されていることより,地すべり活動が見受けられる温泉地すべり地帯でもある。当該地区は温泉地という特異な環境下にあることより,水温やpHをはじめとした地下水の性状が通常の地すべり地とは大きく異なっており,対策工法を検討するにあたっても注意を要するところである。また,地すべり斜面の安定性を検討するに当たっては経験的な方法が用いられているのが現状である。そこで,本研究では,温泉地すべりの発生機構を解明するために,明礬地すべり地を対象として現場計測を行うとともに,地すべり斜面の安定性に影響を及ぼす要因のうち,斜面安定解析手法と強度定数に着目して計算を行った。以下に得られた結果を示す。(1)地下水位は年間を通じて変化が大きく,とくに,6月中旬から9月の梅雨や台風時期にかけて大きく上昇する。(2)地下水の性状は,高温,低pH,高電気伝導率という高腐食環境下にあり,その傾向はボーリング孔によって異なる。(3)すべり面付近の粘土は,季節によって異なる水温,pH,電気伝導率の履歴を受けており,その範囲は,水温24〜29°,pH3〜4.5,電気伝導率10〜30mS/mである。(4)逆算法により強度定数を求めた結果,下部すべりに着目すると,Fellenius法により得られた内部摩擦角φがBishop法のφよりも約1.3°大きくなっており,同じ安全率を設定しても強度定数が異なる。
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