2007 Fiscal Year Annual Research Report
貝毒アザスピロ酸の全合成とハプテン合成に関する研究
Project/Area Number |
17510173
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
及川 雅人 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 准教授 (70273571)
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Keywords | 合成化学 / 全合成 / ハプテン / 天然物化学 / 貝毒 |
Research Abstract |
アザスピロ酸は、ムール貝などの食用二枚貝によってアイルランドで発生する新規食中毒『アザスピロ酸中毒』の原因毒として単離・構造決定されたポリエーテル化合物である。この食中毒が初めて報告されてから13年にもなるが、未だにその食中毒の分子機構や貝の毒化の原因が解明されていない。この食中毒による被害は、現在では時期を問わず一年中見受けられるようになり、その範囲も遠く南のモロッコにまで広がっている。こうした社会不安から、合成化学的研究による検出法の確立、生物活性の正確な評価、構造活性相関、活性部位の特定、分子標的の同定などが求められている。 本研究ではアザスピロ酸の全合成と、その抗体調製のためのハプテン開発を目的とした検討を進めている。昨年度までに、我々はその下半分に相当するEFGHI環部分構造の合成に成功している。また、CD環部構築のためのモデル実験を行っている。本年度はこれらの成果をふまえて、特に抗アザスピロ酸抗体作成のためのハプテン調製を目標に据えた検討を進めた。 まず、40位アミノ基の保護に用いていたプロピルオキシカルボニル基の除去に問題があったため、Teoc基に変更し、これを用いた合成を進めた。合成は従来通りHI環部の構築を行ったのちにFG環部を作り付ける経路で行い、FGHI環部モデル化合物を得た。Teoc基の除去はTBAFを用いることによってスムーズかつ好収率に進行した。そこでこの保護基を用いた方法でハプテン化のためのEFGHI環部化合物の合成を行うこととした。2006年に我々が報告した方法ではE環部にフェニルチオ基があるため、これにアルキル鎖リンカーを導入し、タンパク質に導入する計画に沿って実験を進めた。モデル実験では鈴木反応によるアルキル鎖リンカーの導入が好収率で進行したが、EFGHI環部に対する反応においては、この反応がほとんど進行しなかった。そこでE環に対してアルキル鎖リンカーを直接導入することとした。これはフェニルチオ基のα位にアニオンを発生させ、ハロゲン化アルキルと縮合することにより合成することとし、モデル化合物による実験では良好な結果を与えた。この方法によるEFGHI環部へのリンカー導入を現在進めているところである。多段階合成であるため、ハプテンの調製にまではあと数ケ月かかる見込みではあるが、主な問題点はクリアしているため、目的は達成できる見込みである。
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