2006 Fiscal Year Annual Research Report
物理化学的安定性が高度に向上した蛋白質分子間ジスルフィド架橋結晶の創製
Project/Area Number |
17510186
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Research Institution | Quantum Beam Science Directorate, Japan Atomic Energy Agency |
Principal Investigator |
黒木 良太 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究主幹 (30391246)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉田 太郎 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究副主幹 (50391248)
安達 基泰 独立行政法人日本原子力研究開発機構, 量子ビーム応用研究部門, 研究員 (60293958)
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Keywords | 結晶構造 / 分子間架橋 / T4リゾチーム / 水和構造 |
Research Abstract |
結晶中に存在する蛋白質をそのまますべてつなぎ止める(架橋する)ことができれば、結晶場での更なる安定化効果によって、結晶の著しい安定化が期待できる。研究1年目に相当する昨年度は、T4リゾチームを題材として分子間架橋領域にシステイン残基を変異導入し、分子間架橋結晶を作成することに成功した。そして2年目に相当する平成18年度は、架橋結晶を用いて様々な溶媒環境での立体構造解析を実施し、次のような結果を得た。 1)架橋した変異体の立体構造決定:T4ファージリゾチーム(T4L)において分子間架橋構造を形成させた結晶を用いて、立体構造解析を実施した。その結果、導入したCys残基を介して分子間のジスルフィド結合の形成を電子密度として確認できた。 2)低イオン強度水溶液における構造解析:架橋結晶は、沈殿剤溶液から純水に移してもその外形を保っていた。そこで水中に保持した架橋結晶にX線を照射し、結晶に含まれるタンパク質の立体構造を解析した。架橋結晶中のタンパク質構造は、沈殿剤溶液中とほぼ同一であった。 3)有機溶媒中における立体構造解析:架橋結晶を低濃度の有機溶媒に移した場合もその結晶外形は変わらなかった。しかしながらX線を照射しても回折像は全く得られなかった。 4)様々なpHにおける立体構造解析:調製した架橋結晶を様々なpHの緩衝液に移し、その立体構造を解析した。pH4から10までの広い範囲で回折像が得られた。各pHで得た回折データから立体構造を解析したところ、驚くべきことにこれらの範囲ではアミノ酸側鎖に至るまで立体構造は極めて類似していた。タンパク質を架橋して結晶場に封じ込めることによって、タンパク質の総電荷に制限が発生している可能性がある。 この研究によって、様々な環境におけるタンパク質表面の水和状態を観測することに成功した。
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