2006 Fiscal Year Annual Research Report
東北地方に自生するイワテヤマナシの保全とその利用に関する研究
Project/Area Number |
17510196
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
片山 寛則 神戸大学, 農学部, 助手 (50294202)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
植松 千代美 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 講師 (30232789)
菅原 悦子 岩手大学, 教育学部, 教授 (70122918)
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Keywords | 香り / 遺伝資源 / 保全事業、保護 / イワテヤマナシ / 遺伝的多様性 / ジーンバンク / 系統保存 / 系統解析 |
Research Abstract |
【フィールド調査(イワテヤマナシは自生種それとも導入種?)】昨年度に続き今年度も東北地方におけるイワテヤマナシの分布調査を行った。未調査地域の秋田県白神山系、鳥海山近辺の秋田県南部と山形県北部の調査が終了した。白神山系にはイワテヤマナシを含めたナシ属植物はほとんど生存していなかった。また鳥海山を中心として秋田県南部、山形県北部域ではニホンナシの在来系統と想われる大果系ナシやイワテヤマナシとニホンナシとの雑種と思われる果実を有する個体はみつかったが、イワテヤマナシの野生個体(果実直径が3cm以下、有蒂、山中または放牧地に自生)はほとんど確認できなかった。未調査の青森県下北半島を除き、北東北のほぼ全域にわたるナシ探索が終了し、合計840本のナシ属植物がみつかった。奥羽山系では街道沿いや人家の周辺、畑の縁などで現存していたが野生個体はなかった。北上山系ではイワテヤマナシの群落はなかったが、北は階上岳より南は早池峰山までの標高の高い地点で野生個体が見つかった。片上山系の高地で現存する野生個体は自生種である可能性が高い。 【保全事業】探索で見つけたナシ約550本をナシジーンンバンクとして神戸大学に保存した。また保存後に現地で伐採された個体の返還事業として岩手県九戸村、遠野市にて苗木を植栽した。 【DNA分析によるイワテヤマナシの起源】これまで世界のナシ属植物の葉緑体DNAのrps16-trnQとaccD-psaI遺伝子間領域における欠失変異の有無を調査し3タイプ(A, B, C)のゲノムを識別した。収集個体の320個体中の約2割とアオナシ、マメナシはA型のゲノムタイプであり原始型だった。収集個体の他の8割とニホンナシ栽培品種のほとんどはB型だった。セイヨウナシ、アフリカ、中央アジア、ロシア由来のほとんどの系統はC型だった。この結果から約8割のイワテヤマナシ収集個体にはニホンナシとの雑種が含まれ、残りの2割に真のイワテヤマナシが含まれると推定した。また(独)果樹研究所との予備的な共同研究により25種類の核SSRマーカーを用いた集団遺伝学的手法(STRUCTURE解析)により真のイワテヤマナシとして北上山系の早坂高原の集団が推定された。今後北上山系由来の集団数を増やしイワテヤマナシの自生集団をDNAレベルから明らかにしたい。 【芳香性物質の同定】果実に芳香を持つイワテヤマナシ収集個体のうち、ナツナシ、サネナシ、系統番号i830の3系統の果実の香気寄与成分を官能試験、TenaX-TAカラム濃縮法を用いたGC-0分析、AEDA法、GC-MS分析により香りの特徴づけと成分を同定した。ナツナシは官能試験では甘く爽やかな香りであり、ethyl2- methylbutyrateが最も寄与度が高かった。またサネナシは官能的には強い甘さを持っておりethyl2- methylbutyrateとethyl Hexanoateの寄与度が最も高った。I830系統ではグリーンな花様の甘さを持つ高沸点の未同定物質とethyl 2-methylbutyrateが最も高かった。ナツナシとサネナシには共通の寄与度の高い成分が多く、2系統の香りは似ていることが明らかになった。またethyl 2-methylbutyrateはニホンナシ'幸水'では比較的寄与度が高かったが、セイヨウナシ'ラフランス'ではほとんど寄与しておらずアジアのナシに特徴的な成文化も知れない。今後はより多くの収集系統の香気成分を調べて分類し、イワテヤマナシに特徴的な香気成分を明らかにしたい。
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Research Products
(2 results)