2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国における回族の宗族と海外移住-福建泉州丁氏と山東溜川蒲氏の族譜を手がかりに
Project/Area Number |
17510204
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
王 柯 神戸大学, 国際文化学部, 教授 (80283852)
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Keywords | 回族 / 宗族 / 族譜 / 海外移住 / ネットワーク / 華僑 |
Research Abstract |
1、中国の上海市、浙江省、福建省、北京市を訪問し、上海大学、アモイ大学、中央民族大学、中国国家図書舘、浙江図書館、中国海外交通博物館、福建泉州図書館の所蔵する資料を調査し、福建省の回族宗族の歴史と現状、さらに族譜を手がかりに宗族構成員の海外移住の歴史と現状、海外移住者のアイデンティティ、故郷とのつながりの方法、帰省の頻度、経済活動の有無などを中心とするネットワークの歴史と現状について、いままで公開されていない族譜を大量に入手した。とくに強調すべきは、福建省泉州市における調査では、学界にあまり知られていなかった泉州市在住の回族宗族である蒲氏の族譜も収集でき、彼らの現在の生活状況についても調査ができたことである。 2、日本において、東京大学、日本華僑総会、神戸中華総会、神戸華僑博物館、神戸福建会館、神戸華僑山東同郷会などを訪問し、日本華僑社会の歴史と現状と華僑ネットワークについて調査し、資料収集を行なった。神戸在住の福建省出身の華僑の助力を得て、浙江省杭州市と福建省アモイ市に在住しているある帰国華僑家族の構成員数人を広範囲にわたって直接面会し、インタビューを行い、福建省泉州地域出身の華僑・華商がいかに血縁関係を頼りに、東南アジアと日本、そして中国との間に婚姻関係を結び、移住を繰り返し、貿易ネットワークを次第に拡大していくことについて第一次の証言と資料をえた。 3、直接関連する研究の成果として、2006年6月に学術書『20世紀中国の国家建設と「民族」』(東京大学出版会)を出版した。その第4章である「国家、民族とイスラーム--ムスリム国民誕生の政治文化」は、国際関係史、民族史、地方史などの視点から第一次資料を用い、20世紀の初頭に日本に来ている回族出身の中国人学生たちはいかに日本における近代国家建設の動き、そして「清国出使大臣」楊枢(回族)の近代国家建設思想に影響され、宗教意識が変化し、そして中国故郷の伝統的社会構造、宗族と宗教教育などの社会環境に大きな影を落としたかについて分析した。
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Research Products
(1 results)