2006 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・スハルト期インドネシアにおける華人社会の変容の研究
Project/Area Number |
17510205
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
貞好 康志 神戸大学, 国際文化学部, 助教授 (20314453)
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Keywords | ポスト・スハルト期 / インドネシア / 華人 / 政策 / 同化主義と対抗言説 / 社会変容 |
Research Abstract |
1.裏面11に記した雑誌論文を急遽執筆・発表した。これは2005年から2006年にかけてインドネシアの国籍法が約半世紀ぶりに改訂される動きが表面化した(結果的には、華人の国民としての平等な地位の保証を明記するなど画期的な内容で2006年7月に成立した)ことを受け、同国住民の中で同改訂の影響を最も被る華人の、国籍に代表される法的地位の淵源を植民地期にまで遡って整理したものである。 2.当初予定していた夏期の現地調査をあえて行わず、文献資料の読み込みに集中した。本研究テーマ(ポスト・スハルト期の華人社会の変容)の前提となる事柄のうち、スハルト期の華人社会の実態については中部ジャワを中心に研究してきたが、華人同化政策の権力中枢での策定過程や政権にバックアップされた同化運動の実態については、これまで手薄であった。昨年来の調査の成果として、華人政策に深く関わった政府機関(BAKIN)やシンクタンク(CSIS)の一次資料が大量に入手できたため、それをきちんと読み込み分析整理しておくことの方が先決だと判断したためである。 3.刻々と変わる社会実態の細かな最新動向を徒らに追いかけるだけでなく、大きな歴史の流れを見極める努力を並行してすべきだ、むしろ今年度はそちらに軸足を置くべきだ、と考えるに至った理由の一つは、本研究と同時進行で完成を期している博士論文の作成作業において、単なる「スハルト期華人社会の実態報告」でなく、それに前後するもっと長いタイムスパンの中で生起してきた諸事態を、歴史的に捉え考察する方向へ舵を切り直したこととも関係する。具体的には、国民統合における華人の位置づけをめぐって対立的概念となってきた「同化主義」と「対抗言説」の系譜を、国内外の政治・社会動向と関係づけながら考える。そのような考察軸を据えてポスト・スハルト期を考え、かつ20世紀以降の現代史の中に位置づける、という本研究の方向が、一次資料の読み込みと分析・考察を通じ改めて定まったことが、今年度の最大の収穫といえる。 4.夏期に保留した出張の代替として、年度末の3月18〜25日にインドネシアでの現地調査を行った。短期ゆえに首都ジャカルタ周辺に限られたが、却って集中的に、スハルト期やポスト・スハルト期に華人社会を代表して活動している諸組織やキーパーソン・研究者(延べ20名)との面会・インタビュー・情報交換、および文献資料の収集を行うことができた。
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