2007 Fiscal Year Annual Research Report
ポスト・スハルト期インドネシアにおける華人社会の変容の研究
Project/Area Number |
17510205
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
貞好 康志 Kobe University, 国際文化学研究科, 准教授 (20314453)
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Keywords | インドネシア / 華人 / ポスト・スハルト期 / 政策 / 同化主義と対抗思想 / 社会変容 |
Research Abstract |
1.年度前半は研究成果の公表(研究論文1本と学会発表2本)に力点を置いた。このうち、論文はスハルト体制期の華人同化政策の基本思想と予盾を最も体現したと思われる半官製組織バコム(Bakom-PKB)に関するものである。学会発表のうち、国内(東南アジア学会)でのものは、インドネシア新国籍法の成立(2006年)を受け急遽執筆した昨年度の論考をさらに掘り下げた内容、国外(国際アジア学会)でのものは、1990年代にジャワで行なった華人の社会実態調査の成果を今日の視座から振り返ってその意義を問うたものである。 2.3つの研究発表が年度前半に集中したので、当初夏季に予定していたインドネシアでの現地調査は、3月5日〜26日の3週間を充てて実施した。調査地別の概要は次の通り: (1)首都ジャカルタでは、ポストスハルト期の華人社会の再組織化で最も成功した事例となっているINTI(印尼華裔総会)とPSMT(印華百家姓協会)の本部、および華人を対象とする新雑誌シネルギ(Sinergi)の編集部を訪ね、それぞれ代表者との意見交換、情報収集を行なった。 (2)中部ジャワのスマランでは、スハルト期に残存していた二つの伝統的葬祭互助組織が会員の高齢化などにより斜陽傾向にある一方、中国廟の増築や年中行事が盛大に行なわれていること、スハルト時代には禁止されていた中国語教育が、華人のみならず非華人(プリブミ)も巻き込み盛況であること、地方議会に進出した華人政治家や若いコミュニティ・リーダーの提携によって華人街中心部での夜市が新しい町興しとして毎週末開催され、これもプリブミの売り手や消費者も巻き込み住民融和の場としても成功しつつある近況などを実見した。 (3)リアウ州のタンジュンピナンでは、PSMTIの支部代表者や州議会に進出した若手の華人系政治家と面談してこの地の華人社会の概要や近年の動向について情報を得たほか、市街中心部のチャイナタウンおよび、対岸のカンプン・チナと呼ばれる華人集落(いわゆる水上家屋で構成されている)で集中的調査を行なった。結果、華人社会の言語文化的特性や、ジャカルタよりもシンガポールとの往来が盛んなネットワーク状況、海域ムラユ文化で緩やかに結ばれつつ血統的出自を問題にすることがあまりない住民間関係など、ジャワとは相当異なる社会的傾向をこの十年来の変化とともに確認することができた。いずれも詳細は目下分析中である。
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