2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17510208
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
今岡 日出紀 島根県立大学, 総合政策学部, 教授 (50184809)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
溝端 佐登史 京都大学, 経済研究所, 教授 (30239264)
田中 宏 立命館大学, 経済学部, 教授 (10163560)
貴志 俊彦 島根県立大学, 総合政策学部, 助教授 (10259567)
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Keywords | ロシア / 市民社会 / 経営者 / 大衆 / 利害調和 / 中間層 / 社会主義 / 社会的安定 |
Research Abstract |
本年度は、文献資料の購入・整理・精読、研究レビューを行い、研究会に参加・報告して関連する研究課題をレビューすることを通して、ロシアにおける住民の行動様式と市民社会の形成過程についての共通認識を形成することに主眼を置いた。 まず、研究会への参加・報告を通じて、ロシア社会が有する課題についてレビューをおこなった。 5月には比較経営学会全国大会にて、ロシア社会における経営者層と大衆の意識との関係について検討した。新しい社会層である経営者層は、民営化・私企業の創設を通じ、量的に大きく増大した。しかし、転換前の経営者、官僚が再生する事例も多く検出されており、大企業経営者を中心に、一般大衆から必ずしも好意的に受け入れられているわけではない。ただし、労働者と経営者との間には、職の保証をはじめとする利害調和も確認されており、そのことがロシア社会に一定の安定性を付与している。 8月には比較経済体制研究会夏期研究大会にて、ロシアの社会構造・利害関係を導くモデルについて議論をおこなった。いくつかのモデルに共通する特徴として、内部に再生産メカニズムが存在すること、一定の社会的安定が付与されていることが挙げられ、ロシア社会の独自性を規定している。 さらに、中間層の形成と変容に見る独自性にも注目される。市場経済化の進展の中で、中間層は増大の方向性とともに不安定化の可能性も存在している。中間層は一様に市場経済化を支持しているわけではなく、近年の経済成長との間に必ずしも強い相関がないという点に、東欧や中国とは異なるロシアの中間層の独自性を見ることができる。 最後に、ロシアにおける市民社会形成を展望する上で、ソ連社会との遺産を看過することは出来ない。現在、ソ連期における資本形成、消費社会の進展といった観点からロシア社会に及ぼす社会主義の遺産の意味について検討している。研究成果は近く書籍出版の形で公表される予定である。
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Research Products
(4 results)