2008 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520012
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨田 恭彦 Kyoto University, 大学院・人間・環境学研究科, 教授 (30155569)
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Keywords | ロック / カント / ヒューム / 観念 / 物そのもの / 物自体 / 観念説 / 自然主義 |
Research Abstract |
平成21年度前期は、カントの「物自体」の考え方に焦点を当て、それが位置づけられる論理空間を検討した。主として『純粋理性批判』、『プロレゴメナ』におけるロックやバークリへの言及を手掛かりに、カントの認識論の基本的枠組みがロックやバークリのそれとどのような対比をなすかを明らかにするよう試み、カントの超越論的観念論の枠組みがロックの自然主義的観念説の枠組みの論理的変容の結果であることを、論証した。その成果は、Yasuhiko Tomida, "Locke's 'Things Themselves'and Kant's 'Things in Themselves', " in Hutton and Schu-urman (eds.), Studies on Locke (Dordrecht: Springer, 2008), pp. 261-275で公にした。 平成21年度後期は、以上の検討結果を念頭に置きつつ、ヒュームの観念説の再検討を試みた。ヒュームは物質を否定するわけではないものの、懐疑論的立場を採ったことで知られる。だが、彼が、同時に、物質の存在をかえって自明のこととしていたことにも、近年、改めて、研究者の関心が向けられている。こうした状況を考慮しつつ、ヒュームの観念説を再考することにより、本研究全体の成果とそれが示す方向を明らかにするよう試みた。 なお、本研究の遂行の途上で、京都大学VBL(現在は理化学研究所)の物理学者武仲能子氏との共同研究により、ミクロ物理学の視点からロックの記号学と自然学の密接な関わりを再考した。その成果の一部は、Yoshiko Takenaka and Yasuhiko Tomida, "Locke's Naturalism Reconsidered," in Tomida (ed.), Locke and Kant (Kyoto: Kyoto University, 2009), pp. 25-35で公にした。この件については、更にYoshiko Takenaka and Yasuhiko Tomida, "Locke and the Impos-sibility of Presuppositionlessness: From the Viewpoint of Modern Microphysics"の公刊を予定している。
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