2005 Fiscal Year Annual Research Report
日本における超越観念の深層構造に関する倫理学的基礎研究
Project/Area Number |
17520017
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
豊澤 一 山口大学, 人文学部, 教授 (10155591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 雅文 東亜大学, 総合人間・文化学部, 教授 (30330723)
柏木 寧子 山口大学, 人文学部, 助教授 (00263624)
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Keywords | 聖地 / 景観 / 神 / 和辻哲郎 / 菩薩 / 『神道集』 / 情念 / 活物観 |
Research Abstract |
上原は、聖地のパターン分析をもとに、神に関わる聖地景観において、神を遠ざけつつ神との一体化を求める(遠心性と求心性)という矛盾する心的作用の弁証法的構造の外化が見られることを明らかにした。さらに<景観>の倫理的意味を解明中である。また、『古事記』上巻神話における説話構造を解析し、イザナミ・イザナキから天皇誕生までの論理を解明しつつある。神仏関係思想についての研究としては、和辻哲郎の『倫理学』及び天皇論や仏教思想を読解し、「空」と神をめぐる和辻独自の原理的な神仏習合思想を改めて整理するとともに、それに対する批判的考察を行った。 柏木は、とくに物語という思想形態によって捉えられた仏・菩薩・神観念を解明すべく、昨年度以前の研究に続き『神道集』説話の読解を行った。具体的には、「諏方縁起」に即し、恋慕の情念の深さが人を神たらしめる構造を分析した。それとともに、諸超越と人との相互関連をめぐり、古代・中世の物語が描く様々な構想を大掴みに捉え、類型化し、倫理学的に位置づける試みに向けての準備考察にも着手した。 豊澤は、天の超越性が、天地万物を基礎づけるとともに、眼前の天地万物それ自体の超越性を徐々に喚起するに至る経緯を、近世儒学思想(伊藤仁斎、荻生祖徠、浅見絅斎等)に即して探究した。それは日本における自然観が、如何にして中世的無常観から近世的活物観へと転轍されたか、という問題でもあるが、詰まるところ、感覚的なるもの、情的なるものの重視が、生命感覚を研ぎ澄まさせ、万物の生動性を内実とする活物観に至った、と考えられる。
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Research Products
(4 results)