2007 Fiscal Year Annual Research Report
日本における超越観念の深層構造に関する倫理学的基礎研究-神・仏・天の歴史的展開とそれを貫くものの把握の試み-
Project/Area Number |
17520017
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
豊澤 一 Yamaguchi University, 人文学部, 教授 (10155591)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上原 雅文 東亜大学, 総合人間・文化学部, 教授 (30330723)
柏木 寧子 山口大学, 人文学部, 准教授 (00263624)
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Keywords | 超越観念 / 仏 / 神祇信仰 / 今昔物語 / 甲陽軍鑑 / 神 / 天道 / 果報 |
Research Abstract |
古代における神・仏関係においては、仏を外来の神と見なす段階から、仏教の正確な理解に基づいて神と仏とを関係させようとする段階への移行がみられる。上原は、この移行の初期において、神祇信仰の中の〈たま〉神・〈もの〉神と仏教における仏(絶対知の体得者)・仏法(存在の真実相)とがどのように関係づけられたのかを解明した。それは、〈神祇信仰における意識と物との関係〉と〈仏教における意識と物との関係〉との関係の解明という意味を持つ。この内〈神祇信仰における意識と物との関係〉を中心にまとめた研究成果の一部分を報告書に示した。 柏木は、仏という超越観念の物語的理解に関わる研究を継続した。今年度は『今昔物語集』天竺部五巻に即し、仏伝・衆生教化譚・前生譚・伝法譚・三宝霊験譚などの総体が提示しようとする釈迦仏理解、また、釈迦仏出現という出来事の理解について、解明に取り組んだ。とくに、衆生教化にしばしば見られる因縁物語(巻第二所収)の具体的読解を通じ、仏の絶対知を介して明かされる衆生の存在の真相、ならびに、その超克あるいは否定として示唆されるところの仏の存在様態をめぐり、考察した(研究継続中)。 豊澤は、近世初期の文献である『甲陽軍鑑』の「天道」観念を考察することによって、超越観念の解明を目指した。人間がこの世界で生きるとき、如何とも為しがたい事に遭遇するが、その不如意は天道に由来する、と考えた。また、よき「果報」も「天道のめぐみ」であって、天道次第である。しかし『甲陽軍鑑』は果報を語るものの、前世は語らず、神・仏をむしろ包越する超越観念が天道であった。また、天道は「家」(武士共同体)の盛衰にかかわってもいた。
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