2005 Fiscal Year Annual Research Report
芸術論・真理論・存在論-メルロ=ポンティを手がかりに-
Project/Area Number |
17520018
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
圓谷 裕二 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60227460)
|
Keywords | メルロ=ポンティ / 真理 / 存在 / 知覚 / 再帰性 / 可逆性 / 現象学 / 主体性 |
Research Abstract |
本年度は、研究課題にある「芸術論・真理論・存在論」のうち、芸術論をも視野に置きながらも、特に、メルロ=ポンティにおける真理論と存在論との関わりについて研究した。その際、それらを、前期の『知覚の現象学』ではなく、後期の『見えるものと見えないもの』の立場から追究した。後期の特徴は、真理や存在を、前期のように身体主体の主体性の観点から論じるのではなく、身体主体の根底に大文字の<存在>を見届け、その観点から真理や存在に接近してゆこうとする傾向が強い。また、多くの解釈家たちも後期のメルロ=ポンティをそのように解釈しがちである。 しかしながら、真理や存在への接近が、このように、真理自体とか存在自体をあらかじめ認めることによって可能なのかどうかという問題は、古代ギリシアのプラントンの真理論・存在論に対する現代哲学からのさまざまな批判をも踏まえると、大きな問題を残していることは明らかである。 本年度は、次年度以降における研究計画の準備段階として、メルロ=ポンティの後期の諸著作に焦点を絞りながら、彼が生涯にわたって自らの哲学の課題としていた知覚論を、彼の後期の存在論と真理論の内容を解明することによって、前期とは異なる後期の知覚論を照射することに努めた。その成果は、平成17年11月の日本現象学会でのシンポジウムの提題者として発表した「知覚の論理-メルロ=ポンティの『見えるものと見えないもの』に即して」や、近く公刊予定の論文「再帰性・可逆性・隔たり-メルロ=ポンティの存在論への一視角」にまとめられている。
|