2006 Fiscal Year Annual Research Report
芸術論・真理論・存在論-メルロ=ポンティを手がかりに-
Project/Area Number |
17520018
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
圓谷 裕二 九州大学, 人文科学研究院, 教授 (60227460)
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Keywords | メルロ=ポンティ / 知覚 / 存在論 / 見えるもの / 見えないもの / 内部存在論 / 間接的方法 / 反省 |
Research Abstract |
本年度は、研究課題にある「芸術論・真理論・存在論-メルロ=ポンティを手がかりに」のうち、特に、メルロ=ポンティの真理論と存在論に焦点を絞りながら研究を進め、単著論文として、次の二つの論文を発表した。一つは、「間接的方法としての内部存在論-後期メルロ=ポンティの方法論」であり、他方は、平成17年11月の日本現象学会でのシンポジウムの提題者として発表した内容を敷衍しながら、「知覚の存在論-メルロ=ポンティの『見えるものと見えないもの』に即して」という題目で学会誌に掲載した。 前者の論文においては、前期メルロ=ポンティの哲学の方法である現象学的方法と後期の方法論とを比較検討しながら、身体論に基づく前期の哲学が、身体をも大文字の存在の一環として位置づけ直す後期哲学へと移行したことを跡づけ、それによって後期における存在論の特徴を、方法論の観点から際立たせた。この研究は、前期と後期を<現象学から存在論へ>という一般的な解釈図式で解する従来の見方を、方法論の観点から考察するという新たな視点を打ち出している。 後者の論文においては、メルロ=ポンティの晩年の遺稿である『見えるものと見えないもの』に即しながら、彼の存在論を<知覚の存在論>と名付けて、その内的構造を明らかにした。知覚論は一般的には<見えるもの>と見る者との関係として論じられるのであるが、見る主体なり見る身体なりが知覚の可能性の根拠なのではなくして、<見えないもの>としての大文字の存在こそが、<見えるもの>と見る主体との関係そのものを可能にしているのだということを解明した。この研究成果は、後期の難解なテキストに即しながら、メルロ=ポンティの後期哲学の核心を明確に浮き彫りにしたものである。
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Research Products
(2 results)