2008 Fiscal Year Annual Research Report
満足する理性。カント実践哲学への感情論的アプローチ
Project/Area Number |
17520024
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
竹山 重光 Wakayama Medical University, 医学部, 准教授 (60254520)
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Keywords | Selbstzufriedenheit / 幸福 / 最高善 / 感情 / 行為遂行 / 現在という時間相 |
Research Abstract |
本年度は、「自己満足」(Selbstzufriedenheit)が公刊著作において語られる唯一の箇所である『実践理性批判』の「実践理性の弁証論の批判的解消」節の精密な読解を試みた。最高善概念が背景となっている同箇所の文脈を踏まえつつ、自己満足が語られるのはいわば当然であり、この感情は行為者が行為するその時点、行為の現在において充分な意義を有する快感情であることを確認した。 また、カントの生涯を通じて確認される、人間の現実的生あるいは行状(Lebenswande1)に浸透する根本的気分としての「穏やかな憂欝」(die sanfte Schwermut)を取り出すことに成功した。自己満足は穏やかな憂欝に浸された人間が抱きうる、快感情である。 以上二点によって、自己満足の位置づけと有意義性が確認された。 しかしながら、『実践理性批判』当該箇所のさらに立ち入った検討を通じた自己満足概念の「実質」、さらにその展開の可能性については、研究を先に進めることができなかった。 また、のちの著作である『道徳の形而上学』の「義務概念一般を感受する心の能力という、感性的な先行概念」の検討も手をつけることができなかった。 これらの残された問題については、新たに研究計画を立案し、他日を期したいと思う。
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Research Products
(1 results)