2006 Fiscal Year Annual Research Report
梁啓超の功利主義思想と章炳麟の反功利主義思想における日本的契機の比較考察
Project/Area Number |
17520038
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
小林 武 京都産業大学, 文化学部, 教授 (20107121)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐藤 豊 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00262931)
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Keywords | 章炳麟 / 梁啓超 / 高山樗牛 / 加藤弘之 / 明治思想 / 井上哲次郎 / 公徳 / 功利主義 |
Research Abstract |
以下のように、分担して作業と考察を行った。 小林:1.章炳麟の思想の重要な概念の一である「自主」観念を、清末思想と明治思想の中で考察した。「自主」観念はlibertyやfreedomの観念と関係があり、明治では前半期に用いられ、やがて「自由」の語に取って代わられたこと、中国では、日清戦争後に多く用いられて「自由」の語と併用された、また国家の独立、自由権、自立できるエートスなどを意味したことを明らかにして、章の「自主」概念の独自性を見定めた。2.章の反功利主義的倫理観を初期より辛亥前まで整理し、その基本的性格を伝統思想の中で検討して、さらに功利主義批判の一つである「倶分進化論」を明治思想と比較検討した。その結果、章の反功利主義は伝統的な「功利」理解の延長線上にあり、「倶分進化論」は、明治思想の中でも高山樗牛の論文と関係が深いことが分かった。 佐藤:1.梁啓超の「公徳-私徳」概念の背景を探るため、「新民説」執筆当時に日本で出版されていた書籍で論議されていた「公徳-私徳」概念を調査・整理した。その結果、梁に対する影響は、福沢にとどまらず明治思想界全般(特に教育界での公徳養成に関する議論)からのものであったことが確認できた。2.「公徳」とは、広い意味で国民国家を成立せしむるために国民が持つべきエートスと定義しうるが、明治期の論調でも、新たに「社会」で遭遇する他者との、功利主義的な人間関係と、「国家」という「想像の共同体」への忠誠心という二つの要素を含んでいたことが確認された。3.梁啓超の「私徳」強調への転換(「公徳」養成の時期尚早論)は、「国家」の未成立に伴う、功利主義的倫理受容の失敗を意味するが、そこには井上哲次郎の朱子学的「公徳」解釈が大きく影響していることが分かった。
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Research Products
(2 results)