2007 Fiscal Year Annual Research Report
後期インド仏教史における密教思想の位置づけに関する研究
Project/Area Number |
17520047
|
Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
久間 泰賢 Mie University, 人文学部, 准教授 (60324498)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
種村 隆元 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 助教 (90401158)
|
Keywords | 後期インド仏教 / 密教思想 / Jnanasrimitra / 中観思想 / 方便 |
Research Abstract |
本研究の目的は,後期インド仏教における密教思想とそれ以外の仏教思想との関係を明らかにし,後期インド仏教史再構築に向けての端緒をっくることである。最終年度にあたる今年度は,本研究の具体的目標である,Jnanasrimitra(10-11世紀頃)に帰せられる『金剛乗に関する二つの極端な見解の排除(rDo rje theg pa′i mitha′gnis sel ba)』の校訂テクスト・英訳註の完成を目指し,9月にはネパールのカトマンドゥNepal Research Centreにおいて研究会を開催するとともに,関連資料の収集を行った。校訂テクスト・英訳註については近年中に公刊する予定であるが,とりわけ今年度明らかになった諸点について以下に記しておきたい。 (1)当該テクストの著作コロフォンにはJnanasriという著者名のみが記載されているが,TaranathaとSum pa mkhan poはJnanasrimitraが当該テクストの著者であるとしている。ただしこの伝承の正当性についてはさらなる慎重な検討が必要と思われる。 (2)研究分担者の種村隆元は,当該テクストに言及されるcaryaという概念について,それがGuhyasamajatantraに言及されるものと親近性を有し,またCaryamelapakapradipaに言及されるcaryaという概念ともある程度の関連性を有していることを明らかにした。 (3)Bu ston,Tsog kha pa,Padma dkar poなどの後代のチベット仏教の思想家たちが当該テクストを引用している事実を明らかにした。その引用頻度からしても,密教思想とそれ以外の仏教思想との関係を論じる際に,当該テクストがある程度の影響力を有していたことが予想される。
|