2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520049
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Saitama Institute of Technology |
Principal Investigator |
宮井 里佳 埼玉工業大学, 人間社会学部, 助教授 (80290998)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
落合 俊典 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究科, 教授 (10123431)
本井 牧子 大谷大学, 文学部, 任期制助手 (00410978)
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Keywords | 金蔵論 / 衆経要集 / 法苑珠林 / 類書 / 敦煌写本 / 諸経要集 |
Research Abstract |
『金蔵論』(『衆経要集金蔵論』)は中国において長く散逸し、日本に一部の写本が伝存していることが近年知られていた。すなわち、巻一および巻二の合本(大谷大学蔵(法隆寺旧蔵)長承三(1134)年奥書写本およびその転写本)と興福寺蔵日本霊異記(国宝)紙背書写の巻六(部分)とである。しかし荒見泰史氏によって『金蔵論』の可能性がある敦煌写本3点が指摘され(2004年12月)、我々が調査研究したところ(2005年8月にイギリス・大英図書館およびドイツ・ベルリン国立図書館で調査、方廣錫氏に1点教示を得た)、『法苑珠林』と誤解されていたもの等下記の敦煌写本8点を、いずれも完本ではないが、首題・尾題、説話の連続性、興福寺蔵巻六(部分)との対照などにより、『金蔵論』であると推定し、以下のように分類した。 敦煌本A:北京1322、俄蔵Дx00977、北京大学D156【巻五、六】 敦煌本B:北京8407【巻五】 敦煌本C:スタイン3962【巻五】 敦煌本D:スタイン4654【巻六】 敦煌本E:ペリオ3426【不明】 敦煌本F:スタイン779【不明、日本写本とは別系統の巻二の可能性あり】 以上によって『金蔵論』巻五および巻六を復元することができ、それは『金蔵論』の全体像についての考察にも益するものである。また敦煌写本の存在は『金蔵論』(少なくとも巻五、六)が広く流布したことを示し、本書が北朝末期の仏教資料として価値があることの証左となる。我々は日本伝存写本の訳注に続き、復元した巻五・巻六の校訂テキストと訳注とを作成中である。 また、大谷大学蔵巻二が元来『金蔵論』ではない可能性(本井牧子論考)をはじめ、『金蔵論』の構造や性格に関してさらに考究すべき問題点が明確になりつつある。
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Research Products
(2 results)