2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520056
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Research Institution | Osaka Kyoiku University |
Principal Investigator |
岩田 文昭 Osaka Kyoiku University, 教育学部, 教授 (00263351)
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Keywords | 道徳 / いのち / 畏敬の念 / スピリチュアリティ / 学校教育 / 生命の尊厳 / 宗教的情操 / 高坂正顕 |
Research Abstract |
本研究は、道徳の副教材とその指導書を広く調査・収集し、道徳教育の実態を解明するとともに、その中に含まれている「宗教性」の中味を検討することを目指した。そのために公立の小中学校で用いられている道徳の副教材を検討し、その中で、見え隠れする「宗教性」の内容とそれが孕む意義を考察することを試みた。その成果は、第一に「道徳教育における<宗教性>」(『現代宗教2007』掲載)において、道徳教育における「宗教性」が従来考えられてきた「畏敬の念」よりも、むしろ「人間の弱さ」などを描いた物語に読み取れることを指摘した。さらに第二に「西田の生命論といのちの教育」(『西田哲学年報』第4号掲載)において、宗教的情操概念が変質した過程を西田幾多郎や高坂正顕らの思想に遡って明らかにした。これらの論文作成にあたっては、大阪教育大附属平野小学校梶原博教諭や名古屋市の道徳教育推進の中心メンバーの一人である片山顕修教諭などの授業見学などが貴重な導きとなった。また、上越教育大学の得丸定子教授の主催する「いのち教育研修会」の運営に関わったり、東海大学近藤卓教授主催の「子どもといのちの教育研究会」に参加することで小中学校の多くの実践例に触れることができた。さらに、大阪教育大学の大学院の演習授業で将来の教員候補である院生たちと道徳の副教材の実践可能性を真剣に検討した。本研究は、このように現実の学校現場の教育の実態を踏まえつつ、その原理的反省、とりわけ「宗教性」に関する学問的反省をなしたところに独自の意義を有している。
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