2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520058
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
深井 智朗 聖学院大学, 総合研究所, 教授 (40306379)
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Keywords | 公共性 / 宗教と国家 / 宗教法 |
Research Abstract |
宗教の公共性についての研究の二年目は、宗教の社会的な機能の分析を以下の三点から進めた。 第一に、宗教と社会との関係の事例の歴史的研究で、1)ヴィルヘルム帝政期、2)アメリカの宗教系NPOへの助成金問題、3)日本における事例研究としての大正期が行われた。その中で宗教の公共性を考える際に、その社会の公共概念を生み出す、宗教団体と国家との関係についての類型を提示した。それは1)宗教団体が国家から完全に自立している場合の「宗教の公共性」、2)伝統的な宗教が国家の中で、法的に、あるいは慣習的に特権的な地位を持っている場合の「宗教の公共性」、そして3)国家が宗教団体と同一視されている場合の「宗教の公共性」である。この類型は、歴史的にも適応されるが、現代の社会システムの分析においても有効であることが確認された。 第二に、この問題を東北アジアのコンテクストの中で考察するための方法をさぐり、第一の研究で得た類型をさらにこの領域にも適応するための理論構築を行った。その成果はソウルで行われた第43回アンダーウッド記念学術講座で公にし、批判的な検討を得た。 第三に、この研究の具体的な社会的還元のために、日本のグローカルな状況の分析と、それに適応した事例研究、さらには宗教の公共性という視点から生じる諸問題を考えるための一般向けの解説のためのプログラムを検討、実行に移した。具体的には公立学校における学校給食の問題、修学旅行や研修旅行における宗教施設の見学の問題、自治会等における伝統的宗教の扱い、企業労働者の宗教的権利の保護と宗教的食物規定の問題等を取り上げた。 以下の研究を経て得られた問題は以下の通りです。 第一に、日本においては宗教が1945年以後の法的、制度的改革によって公共の領域から排除される傾向があり、そのために、宗教は社会システムの中で放置された状況の中にあり、そのためにかえって、宗教団体の法的逸脱や社会における宗教への無理解が生じている。 第二に、第一の状況の改革が必要であり、そのためには制度的な整備と同様に、小さな地域的共同体などでの、啓蒙的な活動が有効であると考える。 第三に、この問題は今後の経済的な発展も視野に入れて、アジアのコンテクスでの研究を急がねばならない。
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