2005 Fiscal Year Annual Research Report
組織崩壊に瀕する長崎県下カクレキリシタンの緊急調査研究
Project/Area Number |
17520063
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagasaki Junshin Catholic University |
Principal Investigator |
宮崎 賢太郎 長崎純心大学, 人文学部, 教授 (60157625)
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Keywords | カクレキリシタン / 異文化変容 / 組織崩壊 / 日本人のキリスト教理解 |
Research Abstract |
わが国において最後までカクレキリシタン信仰が残存している長崎県下において、その組織崩壊が危惧されて久しい。1644年、日本においてキリシタンが潜伏してより、すでに360年の年月が経っている。その生命力の強靭さは驚嘆すべきものがある。 しかし、ここでわれわれが十分に注意し、見誤ってはならないのは、何ゆえに、何の目的でそのような強靭な信仰の生命力が今日まで保たれてきたのかということである。多くの人々はそこに信じがたいまでのキリスト教信仰の根強さを見て驚嘆し、あるいは賛美する。しかしながら、彼らが苦心惨憺して今日まで絶やすことなく守り続けてきたその動機はキリスト教信仰ではなく、先祖が命がけで守り続けてきたものを自分達の代で絶やしてはならぬという一心からであることがわかった。 しかし、さしもの強靭なカクレキリシタン信仰の生命力も、先祖に対する篤い想いも、日本社会の構造の大きな変化の波には打ち克つことはできず、漸くにしてその命運は尽きようとしている。平戸地区は突然の風に一瞬にして吹き消されるかのごとくに消滅し、五島・外海両地区はロウソクの炎が自然に気付かぬ間に消え果るように今まさにその火は絶えようとしている。 ただ生月島のみまだ4ヶ所にカクレキリシタン組織が存続し、その信徒数も次第に減少し、諸行事も簡素化の道を辿りつつも、今しばらく(2,30年程度)は継続しうる力があると思われた。しかしながら4,5年来急速に解散の機運が高まり、9つの小カクレキリシタン集団を有していた山田地区が3年余りですべて解散してしまった。3小集団あった元触地区も急激な変化を遂げ、3年余りで解散に準じた形態となった。 本年は長崎県下の主要地区すべてを廻り、ひとあたり現状を概観したが、まさに最終ステージという感を強くした。次年度は解散せざるを得ない状況に追い込まれている人々の偽らざる心情を深く探り出す試みを行いたいと思っている。
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