2007 Fiscal Year Annual Research Report
組織崩壊に瀕する長崎県下カクレキリシタンの緊急調査報告
Project/Area Number |
17520063
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Research Institution | Nagasaki Junshin Catholic University |
Principal Investigator |
宮崎 賢太郎 Nagasaki Junshin Catholic University, 人文学部, 教授 (60157625)
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Keywords | カクレキリシタン / 異文化変容 / 組織変容 / 重層信仰 / 民俗信仰 |
Research Abstract |
生月島のカクレキリシタン集団は壱部,堺目,元触,山田の4地区に分かれているが,前2者はいまだ存続,後者の元触,山田地区は解散したが,解散後の形態には顕著な差異がみられる。すなわち元触地区はさらに小場,辻,上川の3か所に分かれていたが,3か所とも解散後はお堂と呼ばれる小さな小屋が建てられ,従来オヤジ役という個人の家に祀られていたご神体はお堂に祀られ,解散後も旧信徒たちは年に3-4回程度お堂に集まってカクレキリシタン行事を継続している。この行事に参加するのは解散したのであるから任意であって何ら義務はないが,ほとんど全戸参加している。それは解散して神様を捨てたことによって生ずるかもしれないタタリを恐れてのことでもあり,仲間の目を意識しての行動でもあるように見受けられる。しかし,それも今しばらく時がたてば,1軒2軒と不参加者が出てきて,やがてはお堂へも集まらなくなって,完全にカクレキリシタンの信仰は消滅していくように思われる。 一方,山田地区では解散後急速にカクレキリシタン信仰の冷却化がみられる。元触地区のようにお堂を建ててご神体を祀ることは行われず,山田の中のほとんどの宗団がご神体を「島の館」という町立博物館に寄贈し,カクレとの関係をすっぱりと絶ってしまった。例外的に1軒では個人がご神体を引き取り,個人の神様として自宅に祀っている。もう一つのケースは,2軒で交代で祀っているところもある。 上五島若松地区および外海では新たな動きが生じつつある。すなわち消滅しつつある組織の後継者が現れてきているのである。それは昨今の長崎県内におけるキリスト教関連施設の世界遺産登録運動にまつわり,カクレキリシタンの役職者の子孫の中にもキリシタンの歴史と伝統に強く目覚め,継承を考える者が出てきたことである。キリスト教会との結びつきが強いところに特色がある。
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