2008 Fiscal Year Annual Research Report
組織崩壊に瀕する長崎県下カクレキリシタンの緊急調査研究
Project/Area Number |
17520063
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Research Institution | Nagasaki Junshin Catholic University |
Principal Investigator |
宮崎 賢太郎 Nagasaki Junshin Catholic University, 人文学部, 教授 (60157625)
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Keywords | カクレキシタン / 異文化変容 / 組織崩壊 / 民俗信仰 |
Research Abstract |
長崎県下においてもっとも最後までよくその信仰形態をとどめてきた平戸市生月島のカクレキリシタン組織も終焉を迎えつつある。壱部、堺目、元触、山田の4大カクレキリシタン集落のうち山田は完全に解散し、元触の3グループは正式には解散したが、御堂を作り小組組織だけは未だわずかながら命脈を保っている。堺目は3グループが一つに統合され、何とか組織の維持を果たしているが、信徒数は少しずつ減少をたどっている。壱部は6グループ存在したが、残るはいまや2グループとなったが、それとても最高の役職者が健在なのは1グループのみで危機的状況にある。 これに対し外海地区の黒崎、上五島地区の築地・深浦・横瀬のカクレキリシタン組織は従来、生月島よりはるかに深刻な組織崩壊の危機にさらされていたが、共通して新たなきわめて興味深い動きが発生している。すなわち黒崎地区のカクレキリシタン組織の最高指導者(帳方)が死の直前にカトリックの洗礼を受け、その60歳台の子息が帳方を受け継いだ。築地の帳方は高齢で役職を務めていくことができなくなり、昨年末同組織内にある深浦の前々帳方の50歳代の娘婿に帳役を渡し、自らはカトリックの洗礼を本年5月に受ける予定である。 外海、五島地区は長崎県下でも最もカトリック色の強い地域であるが、ここ数年来の長崎県下のキリスト教関連遺跡の世界遺産登録運動にまつわる一種のブーム的な雰囲気がカクレキリシタンからカトリックへの転宗、親カトリック的動きに影響を与えているのは間違いないようである。この新たな動きの意味については慎重に検討せねばならず、カクレキリシタン解散期のひとつの新たな変化の姿として注目していく必要があると考えられる。
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