2005 Fiscal Year Annual Research Report
占領期日本における異文化受容としてのナシヨナルな記憶の文化史的研究
Project/Area Number |
17520073
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe City University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
長 志珠絵 神戸市外国語大学, 外国語学部, 助教授 (30271399)
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Keywords | 占領期 / 戦争の記憶 / ナショナリズムと文化 |
Research Abstract |
近年の「集号的記憶」論をふまえ、日本の戦後の戦争に関わる文化的記憶の形成を論じ、占領期日本でのナショナルな「記憶」の構築・転換を、空襲死者の慰霊制度の創出や国民的メモリアルデーの構築等、具体的事例を通じて解明することにおいた。ことに、近年の戦後-占領期を扱う思想史文化史研究は鋭角的な理論をベースにしながらも、資料収集の面で極めて弱く、戦後の枠組みを踏襲しているため、歴史的視点と手法を活用する本研究が貢献できる点は多いと考える。初年度の今年は主に、沖縄・鹿児島県奄美地方・京都・大阪・兵庫・名古屋・東京等ピンポイント的に資料収集に努め、特に占領期の公文書資料の収集を行い一定の成果を得た。また奄美地方については、占領期の雑誌の収集につとめた(2006.8月学会発表予定)。本土と軍政下の地域についての、慰霊碑や祝祭日、ナショナルな象徴の扱いを対比することで、本土での戦争の記憶構築の構造的な関わりが明らかになった(2006年度論文発表予定)。また、政治文化をめぐる「事件」を日本側資料と米軍占領文書との双方から捉え、必ずしも同じカテゴリーで問題となってはいない点にも言及し、さらに資料収集を積み重ね、途中成果として、台湾での韓日台湾三国「東アジアと冷戦」での口頭報告「占領空間の死者追悼」2005.8於台北、京都大学人文科学研究所研究会での口頭報告「<奉安殿>の戦後」2006.3)などを得た。これらの成果の一部としては、戦後の前提として主に戦前期を扱った「天皇<家族>の表象と新聞付録」(共著1)、「家族イメージの形成と天皇・皇室像」(共著2)や、「<近代>の絵馬奉納と京都洛外の一村社」(論文3)、韓国での学会報告「米軍占領空間と戦争の死者の追悼」(論文1)や「<戦争の記憶>への批判的介入のために」(論文2)としてすでに公表済みである。
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Research Products
(7 results)