2008 Fiscal Year Annual Research Report
中世修道院建築の参事会室・修道女席における絵画図像の研究
Project/Area Number |
17520075
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
谷古宇 尚 Hokkaido University, 大学院・文学研究科, 准教授 (60322872)
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Keywords | 中世美術史 / フランシスコ会 / 女子修道院 / イタリア / 黙示録 / 最後の審判 / アンジュー家 / サンタ・キアーラ修道院 |
Research Abstract |
主に13〜14世紀のイタリアやドイツに建造されたフランシスコ会やクララ会, あるいは女子シトー会の修道院建築を取り上げて, 聖堂の主要部以外, 修道女席や集会室、回廊などに描かれる絵画を, 建築的文脈を考慮に入れた上で検討した。ナポリのサンタ・キアーラ修道院やサンタ・マリア・ドンナレジーナ修道院を調査の中心とし, ミュンヘンやフィレンツェの美術史研究所などでは文献・写真資料の調査にあたった。その際, 当該の時代だけでなく, 中世全般における「最後の審判」「黙示録」「旧約伝」などの図像を視野に入れ, また地域的にもアルプス以北の作例(スイスのケーニヒスフェルデン, ドイツのヴィーンハウゼン, ポーランドのヘウムノの各修道院など)についても検討した。 その結果, この中世末期の時代が宗教的に大きな転換点にあたり, 美術が個人(聖職者・修道士・修道女)の信仰実践に大きな役割を果たしたことが明らかになった。具体的には初期キリスト教時代以来, 救いの実現のあらわれとして聖堂・修道院の建築と美術が構想されてきたという点を引き継ぎながらも, ナポリの作例においてはそれがフランシスコ会の特殊な思想的・政治的な状況の中で変容し, あるいは後の時代を先駆けるような個人の信仰実践を重視する側面が実証されたと考えられる。20年度中に刊行物はなかったが, 平成21年度5月にはIntemation Research Center for Late Antiquity and Middle Ages(Motovun, Croatia)で"Trail gotico el'antico-Alcune considerazioni sulla pittura della prima meta del Trecento a Napoli"という発表を行い順次成果を公表する予定である。
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