2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520082
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
安嶋 紀昭 広島大学, 大学院文学研究科, 教授 (40175865)
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Keywords | 美術史 / 宗教学 / 仏教学 / 建築史・意匠 |
Research Abstract |
本年度は、都合3ヶ年で完結する計画の「鶴林寺太子堂内陣荘厳画の図様と年代」研究の第二年度であり、以下の諸項目を実施した。 1.四天柱筋上の小壁:最新式赤外線デジタル撮影装置を用いて、各画面を均等割りして撮影したデータを、パソコン上で合成・解析した。 2.側柱筋上の小壁:この画面は顔料がかなり剥落しており、ほとんどは下地壁板の風化具合の差によって、辛うじて千仏が浮き出しているに過ぎない。しかし一部に顔料の残存箇所があるので、そのような部分を拾って拡大撮影を行い、表現様式の検討材料とした。 3.格狭間:仏壇の格狭間は安永年間に削り広げられ、全面に白土が塗り重ねられている。しかし、最新式赤外線デジタル撮影装置を用いることで、その下層から麟麟や象など、種々の霊獣を発見することができた。これらを描く線質は、柱絵など他の荘厳画と同一の特徴を有しており、同時期の制作と判明した。 4.東壁春日厨子内壁(秘仏聖徳太子像壁画):春日厨子の保護のおかげで、内部の板壁には薫煙による黒化がほとんど及んでおらず、ニコン製の医学用接写レンズを介して撮影したスライドとデジタルデータなどを用いて、他の画像の彩色復元に有効な比較材料を得ることができた。 その他、荘厳画の制作年代が通説どおり天永2年(1112)か、あるいは鎌倉時代に降るのかを検討するため、12〜13世紀仏画で比較に適切と思われる画像データを収集した。昨年度の成果と合わせ、荘厳画の図様はほぼ全貌を解明できたので、来年度はそのデータに基き美術史上における位置付けを確立する。
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