2007 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520088
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Research Institution | Tohoku University of Art and Design |
Principal Investigator |
長坂 一郎 Tohoku University of Art and Design, 芸術学部, 准教授 (60275617)
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Keywords | 神像 / 神仏習合 / 八幡神 / 身体儀礼 |
Research Abstract |
平成19年度は大分県杵築市奈多宮の重要文化財八幡三神像3躯および県指定文化財若宮神像6躯の調査と愛媛県今治市竹林寺の僧形立像1躯および男神立像1躯の調査を行い、それぞれ新たな発見がありその結果さらに神像の成立についての問題を提起することができることになった。 まず奈多宮の八幡三神像は現在までの解説では八幡神像および女神像1(伝神宮皇后)が11〜12世紀の作で一具像であり、女神像2(伝比売神)はそれより遅れるものとされてきたが、この度の調査によって3躯はそれぞれ制作年代が異なることが分かった。すなわち3躯はそれぞれ木芯を籠めたカヤの-木造という同じ構造であるが、木芯の位置、木目の幅、体の厚さ、彫法などが異なっていた。それらの年代を判断すると八幡神像は10世紀〜11世紀、女神像2が11世紀前半、女神像1が11世紀後半以降の制作と考えられ、現在の一般的な解説と異なる結果となった。平安時代の八幡三神像が3躯遺る例は少ないもののそれらには1材から3躯を彫出したことが確認できるものがあることから八幡三神像は基本的には3一具のものとの見解があり、奈多宮の八幡三神像も一具と考えられる2躯の像はその例であると考えられてきたが、この度の調査で奈多宮の三神像はそれにあてはまらないことが確認できた。このことは平安時代の八幡三神像制作について従来説以外の場合もあったことを示すものであり今後の問題提起となるものである。 ついで竹林寺の僧形立像は新出の神像である。像はウロを持つ一木造で通常の仏像と異なり衣文線がほとんど彫出されていない。素材(霊木)とその表現から神像であると考えられる。僧形の立像神像はきわめて珍しい。さらに通常の仏像と異なり左手をまるめて腹前に置き、それに右手を添える形をとる。現状ではその意味は不明で調査中であるが(身体儀礼か)、仏像では見られない形をするのは間違いなく、とすれば神像成立において仏教以外の形式が影響を与えていたことになる。この点も今後の問題として提起されることであろう。
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