2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520090
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
前田 富士男 慶應義塾大学, 文学部, 教授 (90118836)
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Keywords | 近代美術 / 色彩論 / ゲーテ / クレー / ヘルツェル / オーバーラップ / 近代絵画 |
Research Abstract |
近代絵画の特性は、自然主義の否定と物語性の克服にあり、その典型的な結実が抽象絵画とみなされている。この認識に間違いはないのだが、それでは否定と克服という消極的指標ではなく、積極的な指標を近代絵画に見いだすとすれば、それは何か--この問いかけに対しては、実は的確な解釈が成立していない。筆者は、近代絵画における色彩表環の特性を重なり、つまり「オーバーラップ」に見いだしている。色彩のオーバーラップという問題性は、まずゲーテによって「近代固有の関心」として認識され、20世紀初頭の画家ヘルツェルほかによって、再認識された。この観点から近代芸術を分析すると、色彩という表現メディアの独特な時空間性や動性が明らかになる。 筆者は、本年度8月のドイツにおける資料調査をもとに、10月の美学会全国大会にて「『重映』のありか--ゲーテ色彩論と近代絵画」、また3月に色彩学会関東支部にて「ゴッホとポリフォーカス」と2回の口頭発表を行った。論文として「『重映』の眼ざし--ゲーテと近代絵画」を『モルフォロギア』27号に発表した。ほかにスイスのパウル・クレー・センターの研究者とともに、クレーの色彩研究ほかを中心とする国際共同研究プロジェクトを開始し、来年度には国際共同出版を予定。本年度後半にはそのための資料整理や分析をすすめ、基本的な成果をあげることができた。
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Research Products
(6 results)