2008 Fiscal Year Annual Research Report
イタリア・ルネサンスにおける古代異教的慣習の残存をめぐる歴史人類学的研究
Project/Area Number |
17520096
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
水野 千依 Kyoto University of Art and Design, 芸術学部, 准教授 (40330055)
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Keywords | 終末論的予言 / 奉納像 / 祖先の像imagines maiorum / 像による葬儀funus imaginarium / 皇帝神格化consecratio / 王の二つの身体 / 分身 / 奇蹟像 |
Research Abstract |
本研究は、ルネサンスの図像文化における古代異教的要素の残存を、1.終末論的予言や奇蹟2.古代異教の「祖先の像」「像による葬儀」の残存3.奉納像という3つの事例に即して歴史人類学的に考察を試みた。 1.イタリア戦争や宗教改革にイタリアが苦しんだ時期、各地で誕生が報じられた「怪物」に予言的「徴候」をみる態度がいかに流行したか、怪物の形態学に寓意像や記憶術的イメージの伝統がいかに影響を及ぼしたかを考察し、論文とした。古代の預言文化に鼓舞された高い文化的階層が、民衆的想像力に由来するかに見える文化的要素をいかにブリコラージュしプロパガンダ的言語として利用したかを考察した。 さらに、奇蹟像とその「力」のコントロールという視点から、ルネサンス期の修復的介入が果たした機能について、ネーリ・ディ・ビッチの工房記録をもとに考察し、論文とした。 2.ルネサンス肖像史のなかでも、とくに対象の痕跡に由来するインデックス的肖像に目を向け、その地位と機能を再考した。とくに、古代の「祖先の像imagines maiorum」、「像による葬儀funusimaginarium」、「皇帝神格化consecratio」など、死者の「分身」たる肖像の周りで繰り広げられた儀礼がルネサンスにいかに残存したのかを調べ、カントーロヴィチが中世末以降イングランドやフランスで展開した国王の「像による葬儀」をめぐって提起した「王の二つの身体」という理論も参照しながら、死者を代理表象したり、その身体を二重化する肖像の機能を考察した。さらに、肖像による栄光化と名誉毀損、称揚と処刑、記憶の形成と抹消など、可塑的に機能が反転する側面にも注目し、生身の身体に対する肖像の身体の意味を再考した。 3.研究成果の一部は、「田園の聖母」にまつわる論文のなかで論じるとともに、2.と合わせて、出版を予定している著書の一部として現在執筆を進めている。
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Research Products
(7 results)