2006 Fiscal Year Annual Research Report
川端文学における宗教関連引用文献の調査、および、その方法論的論究
Project/Area Number |
17520115
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Research Institution | Tsurumi University |
Principal Investigator |
片山 倫太郎 鶴見大学, 文学部, 助教授 (90253012)
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Keywords | 文学 / 川端康成 / 宗教 / 仏教 / 日本 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、川端康成が長編小説『海の火祭』(昭和2・8〜12)に引用し援用した文献を、宗教関係のものを中心として調査をおこなった。宗教、神秘主義関連の文献については、古書店等で流通しているものは積極的に購入し、それ以外のものは主として国会図書館で調査をおこなった。新たにいくつかの発見があったが、その中にはたとえば大本教に関するものがある。川端が少年時代に親しくしていた清野(仮名)の実家がどういう経緯で大本に入信したのか、また、川端の中学時代の日記の裏にある詳細などが明らかになる資料である。これらを含めて順次公表する予定である。 一方で、本研究は川端の宗教的思想性の問題と、小説の方法論的問題を明らかにすることを目的としていたが、その一つの成果として学会発表と論文の発表をおこなった。東京大学国語国文学会大会(2006年4月22日、於、東京大学)における、「仏教的なるもの」と題した公開シンポジウムで発表し、これに基づいて「川端文学における「仏教的なるもの」への一考察-『維摩経』受容と新感覚派理論への可能性-」(「国文鶴見」2007年3月)を刊行した。川端の受容した「維摩経」に関する書籍が仏教を近代的文脈において解説したものであり、そこに見いだされる認識論的問題、および、言語論的問題が、川端の思想と作品、また、新感覚派運動に連接している事態を明らかにした。 本研究は文献の発掘という実証的調査と、これに基づく文学、思想の方法論的問題を明らかにすることを目的としたが、新たなる発見と知見を得ることができ、一定の成果をおさめることができた。しかし、いまだ公表していないものが多数あるゆえ、順次新しい論考し公刊してゆく予定である。
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Research Products
(1 results)