2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520119
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Research Institution | University of the Ryukyus |
Principal Investigator |
新城 郁夫 琉球大学, 法文学部, 助教授 (10284944)
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Keywords | 沖縄 / 帝国 / ジェンダー / ポストコロニアル / 反復帰論 / セクシュアリティ / ゲイ・スタディ / 占領 |
Research Abstract |
平成18年度は、『文学』、『日本近代文学』、『国語と国文学』、『現代思想』といった高い専門性を持った学術雑誌に多くの論文を発表し、同時に、日本近代文学会2006年度春期大会、国際シンポジウム・カルチュラルタイフーン2006、などの国際学会において、口頭発表を行うことができたという点において、重要かつ発展的な研究実績を積み重ねることができた一年となった。特に、従来の沖縄文学研究において閑却されてきた観のあるジェンダー・セクシュアリティの視点から、戦後沖縄文学の特質を明らかにする事ができたことは、今年度の研究業績において特筆されるべき点だと考え得る。たとえば、「呼びかけの濫喩へ-バトラーのポストコロニアル批評」(『現代思想臨時増刊号総特集ジュディス・バトラー』第34巻第12号)、「沖縄・歌の反国家-新城貞夫の短歌と反復帰反国家論」(『国語と国文学』第83巻第11号)、「「にっぽんを逆さに吊す」-来たるべき沖縄文学のために」(『日本近代文学』第75集)、「帝国のステレオタイプ-佐藤惣之助『琉球諸島風物詩集』考」(『文学隔月号』第7巻第6号)などの発表論文は、これまで戦後沖縄文学史研究史のなかでほとんど論究されて来なかった、新城貞夫という歌人の作品や、新川明、岡本恵徳、仲宗根勇らによる1970年前後の反復帰・反国家論を、表現史と思想史の融合という論述形式において論じ、さらには、それらの表現のなかに胚胎されているジェンダー・ポリティクスを、特に帝国主義あるいは植民地主義的暴力との関連においで読み解き、戦後沖縄文学研究に新しい展開をもたらすことができたと考えられる。現在進行中の、戦後沖縄文学における沖縄(人)の「主体」意識形成、ジェンダー権力分析、戦後日本文学と戦後沖縄文学の葛藤などの研究テーマを今後とも探求し、来年度においても、積極的な研究業績を発表するべく、科学研究費助成を活用し更なる研究に邁進したい。
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Research Products
(4 results)