2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520122
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
宮崎 真素美 愛知県立大学, 文学部, 教授 (50249281)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 俊雄 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (80315861)
遠山 一郎 愛知県立大学, 文学部, 教授 (80132174)
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Keywords | 国文学 / 文学一般 / 日本史 / 新体詩 / 国学思想 |
Research Abstract |
1、詩選集『纂評新體詩選』(明19)を中心に前年度からの考察を引き続き進めた。今年度は特に、集中たった一篇置かれたキリスト教を題材とする詩篇「耶蘇辨惑一節」に着目。詩篇の作者外山正一が、詩篇を発表した当時(明16)は、キリスト教排斥を標榜する役割を担っていたものが、『纂評新體詩選』収録時(明19)には、現行のキリスト教に対する世間の無理解をあぶり出す役割を果たすようになった変化を指摘、外山はもとより福沢諭吉ら当時の知識人たちが、宗教と国家の関わりに揺れるありさまを追い、明治初年代の国家主義と、それを反映した知識人たちの文芸言語のありようを照らした。 2、小説家・石川淳の祖父、石川省斎が、明治初めの短期間に編纂・出版した漢詩集を追い、それらの編集ポイント(<皇朝(日本)>と<詠史>)が、幕末維新期の漢詩制作・漢詩受容のあり方と不可分であることを指摘。当時の趨勢に棹さした編纂は、幕末期、昌平黌および和学講談所の修史官であった省斎が、そこで手がけた「令集義」の校本編纂作業を、和学所廃止後、自力で出版するために、売れ行きが好調な書物を編集して資金を獲得し、書肆との信頼関係を築いておく必要があったためだろう、との推測を提示。多分に「手段」的側面が強かった漢詩集編纂の仕事は、幕末維新期の知・言葉のあり方を大いに反映したものであったと意味づけた。 3、『大日本帝国憲法』の「天皇ハ神聖ニシテ」という主張について考察を展開。1世紀から19世紀にいたる天皇をめぐる表現を通史的に博捜した。12世紀からの「征夷大将軍」を経た19世紀の王政復古の動きは、すべて神格化された「天皇」との関わりのなかで起こり、先の「天皇ハ神聖ニシテ」は7世紀に作られた歌を受けついだ主張であったと結論づけた。 上記研究実績は、宮崎・遠山・山口の共著『言葉の文明開化-継承と変容-』(平19・4、学術出版会)として出版をした。
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Research Products
(3 results)