2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520123
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Research Institution | Aichi Prefectural University |
Principal Investigator |
中根 千絵 愛知県立大学, 文学部, 助教授 (80326131)
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Keywords | 今昔物語集 / 本文 / 享受 |
Research Abstract |
今年度は、未紹介本今昔物語集の紙焼き写真に基づき、一〇巻から一九巻まで旧日本古典文学大系今昔物語集、新日本古典文学大系今昔物語集の解説と頭注を基に諸本との比較を行った。比較の結果について、コンピュータにうちこみ、わかりやすく表にまとめる作業を行った。昨年度作成した巻二の表について分析を加え、論文の形で公表した。巻二は、最も古い京都大学本(鈴鹿本)今昔物語集の残る巻であり、巻一に見られた古態本系と流布本系の中間に位置するという特色とは異なる興味深い結果が得られた。巻二においては、古態本系と流布本系とが整然と分かれ、未紹介本今昔物語集においても流布本系としての特色を検出することとなった。最古本が与える影響の大きさが測られ、諸本の流れを整理するうえで、重要な指標が得られた。すなわち、最古本が存在する巻は、古態本系はその表現が崩れることなく書写され、最古本が存在しない巻は、最古本ではない中間の様態を示す本の介入により、その表現が崩されたのではないかという指標である。また、昨年度、入手した蓬左文庫本今昔物語集と岩瀬文庫本今昔物語集について、巻一につき、比較の対照表を作成した。その位置づけについては、他の本を集める中で確認する予定である。他に、国文学資料館の有するデータを基に大名家の所有する今昔物語集の検索を行い、加賀図聖藩本今昔物語集の紙焼き本を入手した。その目的は、蓬左文庫本今昔物語集や彦根博物館今昔物語集のような大名家の所有する今昔物語集の本がどのような形で入手されたのか、そのルートを明らかにするためである。その為に各本のもつ特色を明らかにしていく必要があるが、本の入手はその中で必須の作業である。
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