2006 Fiscal Year Annual Research Report
異人/犯罪表象をめぐる近世初期英国の宗教的・世俗的言説間の照応関係についての研究
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17520142
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
境野 直樹 岩手大学, 教育学部, 教授 (90187005)
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Keywords | 英国演劇 / 世俗パンフレット / 他者表象 |
Research Abstract |
今年度は(1)宗教的文献における「異端」断罪の言説における排除の言説の類型をたどり、(2)世俗パンフレットにおける共同体の「外部」および「他者」の発見と定位の言説を、平成13年度〜16年度科学研究費補助金(課題番号13610547)にもとづいて作成中のデータベースに探り、相互の共鳴の可能性を、文体、論理構築の双方から考察した。英国国教会とカトリック、ピューリタンの三つ巴の相互排除の論理は同一のレトリックの効果的な援用と反復によるパロディの効果がきわめて興味深く、世俗的な文献における同種の「他者の定位/しかるのちの排除」の構図との修辞的共鳴を実証できるのではないかというところまできている。ただ、有効な検索キーの設定についてはこれまでの調査による手作業的経験則に頼らざるを得ないところも大であり、データの分析、切り出しの方法について、未解決な課題を残している。他方、トマス・ミドルトンの演劇とパンフレットに、同時代の宗教的文献におけるpenitenceのレトリックの援用が濃厚であることを確認でき、先行研究との整合性を検証中である。現在執筆中の論文では、これまでの研究成果をふまえて、記号'courtesan'の民衆文化史と文学史にまたがる射程での再定義を試みる予定であるが、これは次年度の早い段階で成果として暫定的にまとめることができる見込みである。また、研究代表者は19年度の日本シェイクスピア学会公開セミナー、「ミドルトンーマネー・セックス・ゲームの劇空間」でセミナーリーダーとしても、本研究の成果の一部を発表できる見込みである。
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