2005 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
17520148
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
今泉 容子 筑波大学, 大学院・人文社会科学研究科, 教授 (40151667)
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Keywords | ウィリアム・ブレイク / 複合芸術 / 女 / 裸体 / ジェンダー / ジョゼフ・ジョンソン / アフロディテ |
Research Abstract |
イギリスロマン派詩人・画家ウィリアム・ブレイク(William Blake)の複合芸術作品に頻出する「女」の裸体の意味を、女の裸体の伝統に照らし合わせながら、解明することが、本研究の目的である。そのさい、「女」と「男」の裸体の表象を比較しながら、乳房と性器において「男」とはっきり異なる「女」の裸体にブレイクがつぎつぎに付与した意味が、どのように多層化し複雑化していくかを、初期から後期の作品において明らかにする。こうした目的をもつ本研究は、ジェンダー意識を研究のパースペクティヴに入れようと努力する点において、1970年代のフェミニズム批評がやりかけて放棄してしまった試みを継承するもの、といえるだろう。 初年度である本年度は、18世紀に流通していた医学書や美術作品のうち「女の裸体」の描写を含むもので、かつブレイクの目に触れたと予想されるものを収集した。そして、それらのなかに見られる「女の裸体」の表象を検出する作業を行った。そのために、18世紀英国資料を豊富に所蔵しているイエール大学英国芸術センターへデータ収集に出かけ、(1)ジョゼフ・ジョンソン経由の18世紀出版物、(2)18世紀に流布していた美術作品・カタログ、という二種類のデータを重点的に集めた。なかでも、ブレイクの「女の裸体」の表象の典拠となった可能性のある「アフロディテ」表象の伝統にじゅうぶん注意を払ったつもりである。アフロディテは芸術作品に女の裸が登場した最初の例であり、紀元前350年にクニドス市が購入したプラクシテレス制作のアフロディテ像以来、さまざまなバリエーションがつくられた重要なテーマであるからだ。自ら美術界に身をおき、美術関連のカタログや批評書に広く目を通していたブレイクが、そうした美術作品からアフロディテの表象を学び、そして極めたことは、じゅうぶんに考えられる。こうして収集し、解析した「女の裸体」のデータは、次年度にすぐ取り出して活用できるようにしてある。
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