2008 Fiscal Year Annual Research Report
ダーウィニズム以後の英米のユートピア文学に関する新歴史主義的研究
Project/Area Number |
17520154
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
丹治 陽子 Yokohama National University, 教育人間科学部, 教授 (90188459)
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Keywords | ダーウィニズム / ユートピア / C・G・ギルマン / 『女たちの国』 / フェミニズム |
Research Abstract |
本研究は、ダーウィニズム以後のユートピアニズムの不可能性を分析しようとするものであるが、最終年度にあたる平成20年度において、わたしは、C.P.Gilmanのフェミニスト・ユートピア小説Herlandをとりあげ、そのなかでギルマンが、さまざまな闘争の果てに、「歴史の終焉」として成立させた女性だけの静的なユートピアを否定し、最終的にそこにふたたび男性を導入し、生物学的に多様な男女両性の社会の可能性を肯定しているという点に注目した。 そのうえで、(1)そこにGilman自身のどのようなフェミニズム思想が影響しているのか、(2)そのようなテーマが、進化のための闘争の必要性を強調する同時代のダーウィニズム的、あるいは社会ダーウィニズム的な思想とどのように関わっているのかを、作品の細部を周到に分析することによって明らかにしようとした。 そのために、Gilman自身が編集していたThe Forerunnerというジャーナル(彼女の文学テクストのみならず思想テクストをふくむ)を全体として読んでいくことによって、ユートピアの不可能性というテーマを、より広い思想的コンテクストのなかで位置づけてみた。 さらに、昨年度にひきつづき、19世紀末のユートピアの不可能性を、トマス・モア以来のユートピア文学の伝統にひきもどしながら、その時代に特有の特徴を、「闘争」というダーウィニズム的観念との関連で解明した。 論考の結果は、昨年度に考察したベラミ『かえりみれば』論とあわせて、2010年度に紀要に発表する予定である。
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Research Products
(1 results)