2008 Fiscal Year Annual Research Report
アメリカ文学における銃の表象とアメリカの神話の関係に関する研究
Project/Area Number |
17520167
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
渡辺 克昭 Osaka University, 大学院・言語文化研究科, 教授 (10182908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
貴志 雅之 大阪大学, 大学院・言語文化研究科, 教授 (30195226)
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Keywords | 銃 / アメリカ / 神話 / 歴史表象 / 9.11 / メディア / トラウマ / 政治学 |
Research Abstract |
本研究の最終年度に当たる本年度渡邉は、9.11を描いたドン・デリーロの『フォーリングマン』をケーススタディーとし、本研究の射程をいかに延ばすことができるか、その可能性を最大限に探ってみた。具体的な手続としては、四半世紀に渡って地平線に君臨し続けた「標的」としての至高の空間メディアWTCと、テロリストが自爆的に放つ「銃弾」としての速度メディア(航空機)の合体が反復的に引き起こすアメリカ的「未来」の内破が、いかにポスト9.11的想像力をかきたてたか、デリダの幽霊論を援用しつつ分析を試みた。その結果、アメリカの時空の征服を表象する格好の隠喩でもあった「銃」がテロリストの手に渡ったことにより、銃の神話学に大きなパラダイム転換が起こっていることが判明した。その成果を「9.11と「灰」のエクリチュール-Falling Manにおける“nots"の亡霊」(『関西英文学研究』第2巻)として発表。貴志は、銃に表象されるアメリカの代表的戦争と国家生成に関わる歴史的事件の組織的・反復的言及により、アメリカニズム肯定とアメリカン・アイデンティティ強化を図る大衆誘導演劇メディアとしてThornton WilderのOur Townを論じた 「Grover's Cornersの地政学--Our Townが持つサブリミナル・メッセージ」を全国アメリカ演劇研究者会議第25回大会シンポジウムで発表。第2に、同性愛者のヴェトナム戦争での両足喪失とトラウマに表象される銃の記号性を焦点化し、ヴェトナムからポスト・ヴェトナム時代を背景に資本主義・戦争・クイア・アイデンティティ問題を論じた論考「クイアのポスト・ヴェトナム--ランフォード・ウィルソンの『七月五日』をめぐって」(『アメリカ演劇』第20号)を発表。また、赤狩りと同性愛者弾圧のパラレルを中心に、Tennessee Williamsのクイア演劇戦略を分析した「クイア・カップルの亡霊と遺産--テネシー・ウィリアムズのCat on a Hot Tin Roof」 (『立命館国際研究』第21巻3号)で発表した。
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Research Products
(4 results)