2008 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀パリのシャンソンにおける文化の交錯とアイデンティティ
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17520168
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
三木原 浩 Kobe University, 国際文化学研究科, 教授 (70116177)
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Keywords | シャンソン / パリ / モンマルトル / セート / メロドラマ |
Research Abstract |
1、研究目的のうち、今年度は最終年度なので、平成17、18、19年度で行った調査・考察をもとに、「パリ生まれのシャンソン歌手」「フランスの地方出身のシャンソン歌手」「他の言語・文化圏から越境してきたシャンソン歌手」が、パリとの間に有している距離感、親和力を検討した。そして、「パリへの思い入れ」と「(フランスであれ他国であれ)故郷への思い入れ」の程度の差異を推し量り、相対化した。例えば、パリ生まれのエディット・ピアフのパリへの偏愛、南仏マルセイユ生まれのコラ・ヴォケールのパリはモンマルトルへの感情表白、同じ南仏セート生まれのジョルジュ・ブラッサンスのセートへのノスタルジー、ブルガリア生まれのシルヴィー・ヴァルタンの故郷をもパリをも超えた普遍性等々、興味深い結果を見た。そこから、20世紀を通して、パリに交錯した多文化世界のダイナミズムが、いかにパリ固有の独自性と、その独自性を包み込む寛容な普遍性との共存からなりたっているか、さらにはシャンソン・フランセーズの表現方法・手段がフランス語一言語に特化されることで、結果、パリは己が言語・フランス語を通して、多民族・多言語(つまり多文化)の葛藤をバランスよく調和させ、「普遍的都市文化」へ向かうベクトルとエネルギーを確保・保持してきたかということが、明らかになった。 2、2008年11月25日〜12月12日、本科研費による海外渡航でパリ及びロンドンに出張し、シャンソン所縁の場所を確認しただけでなく、DVD、CD、書籍・研究書等、多くの貴重な資料を購入、更には、カジノ・ドゥ・パリやオランピア劇場で、ジュリエット、ヴェロニック・サンソン、フランシス・カブレル他、全盛期のシャンソン歌手達の実演に接する機会を得、現時点でのパリでのシャンソン受容の実態を調査できた。 3、年2回(2008年5月23目於信州大学人文学部、11月22日於関西学院大学大阪梅田キャンパス)の「シャンソン研究会」を開催し、研究者と意見交換し、多くの示唆を受け、情報を得た。 4、2008年9月23目浜松シャンソン・コンクールで審査委員長。多くのシャンソン関係者と意見交換した。
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Research Products
(2 results)