2006 Fiscal Year Annual Research Report
帝国形成期におけるイングリッシュネスと国家表象の諸相
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17520172
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
飯田 操 広島大学, 大学院総合科学部, 教授 (80116772)
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Keywords | イギリス帝国 / 国家表象 / イングリッシュネス / ブリティッシュネス / ブリタニア / ジョン・ブル / 大英博物館 / ロンドン万国博覧会 |
Research Abstract |
自国意識を醸成する国家表象の役割の重要性に言及しながらイギリス帝国の形成過程を辿る本研究において、本年度は、19世紀末から20世紀初めにかけて意識化されたイングリッシュネスの概念についての理解を深めることを目標としたが、考察の過程において、イングリッシュネスの概念に内包される文化的側面の重要性を再認識した。そこで、それ自体イギリス帝国の表象とも言える大英博物館の創設の経緯とその代表的な展示物であるパルテノン・マーブルの取得に至る社会・文化的背景に関する資料を収集し、検討を加えた。同じようにイギリス帝国の表象である第1回ロンドン万国博覧会の開催に至る経緯を検討し、とくにその記念メダルにイギリスの表象であるブリタニアが使用されるに至る歴史的背景について考察した。さらに、『パンチ』に登場するイギリスの表象をブリタニア、ジョン・ブルの図版を中心に辿り、18世紀における風刺画の伝統がどのように変容したかに留意しながら、当時のジャーナリズムが自国意識あるいは帝国形成に果たした役割について考察した。これらの考察によって、19世紀末から第一次大戦に至る時代における商業主義と軌を一にした軍国主義の社会において国家表象が果たした役割についての理解を深めた。 資料の収集にあたっては、ケンブリッジ大学所蔵の一次資料を使用したほか、大英博物館の展示物において実物を確認した。また、大英博物館学芸員の助力により、当博物館設立当時の未公開の会議資料に関する貴重な情報を得ることができた。
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