2007 Fiscal Year Annual Research Report
帝国形成期におけるイングリッシュネスと国家表象の諸相
Project/Area Number |
17520172
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
飯田 操 Hiroshima University, 大学院・総合科学研究科, 教授 (80116772)
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Keywords | イギリス帝国 / 国家表象 / イングリッシュネス / ブリティッシュネス / 大英博物館 / ロンドン万国博覧会 / ルール・ブリタニア / ブリタニア |
Research Abstract |
自国意識を醸成するうえで重要な役割を果たす国家表象の諸相に言及しながらイギリス帝国の成立過程を辿る本研究において、本年度は、これまでに収集した資料に考察を加え研究成果の報告の執筆に着手した。考察対象の国家表象としては、風刺画におけるブリタニアを中心とした図版、ブリタニアに言及する韻文、あるいは貨幣における意匠などのほかに、大英博物館や万国博覧会が内包する国家表象としての意味についても考察を加えた。そのような文化的あるいは商業的な施設や行事などが展示あるいは教育という方法によって自国意識の醸成に果たす役割の大きいことを再確認し、そこに含まれるイングリッシュネス、すなわちイングランド覇権を容認したイギリス体制の方法が、近代国家創生期のわが国にも大きな影響を与えていることを検証した。 なお、これまでの硬貨におけるブリタニアの表象についての考察に加えて、今年度は紙幣においてブリタニアをはじめとする国家表象が現れる経緯とその背景について考察した。また、一次資料による確認を残していた「ルール・ブリタニア」に連なる韻文の原典のほか、大英博物館設立にいたる経緯や万国博覧会開催に関する賛否両論を含む一次資料について主としてケンブリッジ大学の所蔵資料によって確認したほか、同図書館においては他の貴重な関連資料を収集した。さらに、ロンドン万国博覧会の開催についての同時代のさまざまな意見あるいは第2回ロンドン万国博覧会を見学した日本の幕府使節団に関する資料については、すでに収集済みの『パンチ』の資料に『イラストレイテッド・ロンドン・ニュース』の記事などを加え、より客観的で説得力のある論述ができるように努めた。
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