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2005 Fiscal Year Annual Research Report

コルネイユ劇における英雄像の変遷

Research Project

Project/Area Number 17520175
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research InstitutionHiroshima University

Principal Investigator

村瀬 延哉  広島大学, 総合科学部, 教授 (10089097)

Keywordsコルネイユ / フランス / 演劇 / 17世紀
Research Abstract

本年度はコルネイユ劇の英雄像の変遷における誕生の過程を解明する目的で、主に初期喜劇から四大傑作に至る作品を対象に研究を実施した。
コルネイユは初期喜劇において、英雄の原型あるいはパロディと呼べる二人の人物を創造した『ロワイヤル広場』のアリドールと『舞台は夢』のマタモールである。アリドールは理性による愛の情念の統御を試みようとした点で、コルネイユ的英雄の先駆けと言われる。しかし、一種の風俗喜劇である『ロワイヤル広場』の主人公が披瀝する恋愛哲学は当時流行した新ストア主義を通俗にしたもので、真に崇高な哲学思想とは一致しない。さらに、アリドールと同様、愛を確信できない不安な男がヒロインを試す試金石として信仰や義務といった大義を利用するケースは、後の『ル・シッド』や『ポリュークト』の主人公にも見出せる。このように最高傑作の英雄たちの描写においても、初期風俗劇の影響を残しながら、通俗性を恐れず人間心理の深部をリアルに描きあげるところにコルネイユ劇の魅力が存在する。
コルネイユ的英雄のカリカチュアである『舞台は夢』のほら吹き隊長は、晩年の『シュレナ』等で明らかにされる栄光の空しさや英雄の無常性といった観念が、すでに早い時期から劇作家にとって馴染み深いものであったことを示している。
初期喜劇を経て、コルネイユ劇が政治劇の傾向を強め、国家的危機を救う英雄を好んで取り上げるようになった原因は、特に劇作家とパトロンである宰相の関係にある。『ル・シッド』論争でアカデミーの厳しい糾弾を受けたコルネイユは、リシュリューの存在を強く意識し、戯曲のテーマの選択においても宰相の意向を考慮することになった。愛国心を称揚する『オラース』や、安定した統一国家の確立を希求する『シンナ』が創造されたのはこのためである。このように、時代を反映して生まれたコルネイユの英雄は、時代の変化とともに変貌することになる。

  • Research Products

    (1 results)

All 2005

All Journal Article (1 results)

  • [Journal Article] 『ル・シッド』の語彙-《Gloire》と《generosite》を中心に-2005

    • Author(s)
      村瀬 延哉
    • Journal Title

      欧米文化研究 12

      Pages: 31-45

URL: 

Published: 2007-04-02   Modified: 2016-04-21  

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