2006 Fiscal Year Annual Research Report
生物学的世界観とドイツ文芸クライス-ヘッケル「一元論」の射程-
Project/Area Number |
17520181
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
福元 圭太 九州大学, 大学院言語文化研究院, 助教授 (30218953)
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Keywords | エルンスト・ヘッケル / 一元論 / 進化論 / ヴィルヘルム・ベルシェ / ゲーテ |
Research Abstract |
前年度はヘッケルの一元論が同時代の思想や文学、あるいは造形芸術に与えた影響に焦点を当てたが、当該今年度はヘッケルの思想の由来に注目し、なかんずくスピノザとゲーテの自然観がヘッケルに及ぼした決定的なインパクトについて研究をすすめた。またヘッケルがゲーテをラマルク、ダーウィンに通じる進化論の先駆者と位置づけていることの是非について考察し、ヘッケルがゲーテの原植物・原動物の理説を誤読していることを論じた。 次にヘッケルの最も多くの読者を獲得した著書である『宇宙の謎』を分析し、その実証主義自然科学に裏打ちされた唯物論的世界観と、反形而上学、なかんずくキリスト教からの離反の様相を観察した。しかし興味深いのは、ヘッケルがキリスト教的な人格神を徹底的に否定する一方で、ある種の自然神性論を要請しているという事実である。今年度後半は特にこの逆説的な神の要請に注目し、このように自然にある種の救済機能を負わせる傾向がドイツの思想的伝統においては決して異端ではないことを、口頭発表において論じた。 最後に、ヘッケルの薫陶を受け、通俗自然科学作家として成功したヴィルヘルム・ベルシェの綱領的な論文「ポエジーの自然科学的基盤」を分析し、唯物論的な生物学的世界解釈がポエジーの領域へどのように浸透し得るのかを考察した。アルノー・ホルツやヨハネス・シュラーフ、ゲルハルト・ハウプトマンやグスタフ・ランダウアー、ルー・アンドレアス・ザロメらの名を挙げねばならない、自然主義とリアリズムを巡るこの議論に関しては、その端緒となる部分について、同じく口頭で発表した。
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Research Products
(1 results)